途《みち》
花野井あす
途
世界樹の森で、
無邪気に「おかあさん、おかあさん。」と言って、母親のお乳をちゅうちゅう吸っています。甘えん坊で心の優しい
仔鹿は生れて間もなくして両足で世界を踏みしめます。柔らかな世界の感触の中に仔鹿ははしゃぎます。
あるときは暖かな草花の中に、冷たい石ころや
仔鹿は立派な
母親もたいそう
牡鹿は一人になりました。
大きな楠木の間をすり抜け、せせらぐ小川を片目に、何処までも続くつづら折りの細い道を歩みます。駆け上がることもあります。
その
牡鹿は足を止めました。
険しく厳しい
次第に雨脚は激しくなり、世界は真っ白になりました。小鳥たちの話し声も虫たちの呼び声も聞こえません。世界で牡鹿はたった
牡鹿は恐ろしさと寂しさの中で
すると鈴蘭の香りのする風がやってきました。「わたしはお前を
牡鹿は再び立ち上がりました。母親に鼓舞されたあのときのように。
青々とした楠木が暖かな陽の光を浴び、目映い木漏れ日の粒が
牡鹿は再び歩み始めます。
きっとまた、牡鹿は何処かで
途《みち》 花野井あす @asu_hana
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