夏の終わり

夕闇迫る

日が落ちる

熱気は残る


玄関に蝉がひっくり返っていた

昨夜もしつこく鳴いていた奴だろうか?

今朝もやかましく鳴いていた奴だろうか?


夏が終わる

法師と日暮と

見送られて


哀しい

寂しい

狂おしい


拾い上げて

土の上に

せめて


ジジジジジジジ!


まだ生きる

まだ行きたい

飛びたい


飛ぼう

飛べる!

飛べるはず……


触るな

俺は

俺は……


ひっくり返って、泣いていて

起こしてもまたひっくり返って

つかみ上げようとすれば逃げていく




翌朝、蝉はひっくり返ったまま

触ってももう、動かない

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