狂狐病

@RuPiNaSu

プロローグ

「...ねぇ、本当にこの奥なの...?」

「そうよ、この奥に御神木があるのよ。そこで祈りを捧げれば、きっと母様の病気も治るはずだわ」

「本当にぃ...?怖いよぉ、お姉ちゃん...」


うっそうとした森の奥深く、姉妹が並んで歩いていた。

妹の方は怯えており、姉の後ろに隠れながら進んでいる。


「あ、ほら、見えてきたわよ。あと少...」


姉がそこまで話した時、突然周りが暗くなった。


「きゃっ!く、暗い、怖い、怖いよぉ...っ」


妹は突然暗くなった森が余計に怖くなり、その場にうずくまってしまう。

姉はその声に気が付いて振り向くと、呆れたようにため息をついた。


「もう、気にしすぎよ。太陽が隠れただけでしょう。お姉ちゃん、先に行っちゃうわよ」


「えぇっ...わ、わかった、葉狐もいく、行くから...っ!」


うずくまっていた葉狐(はこ)が急いで立ち上がり、姉の方へ駆け寄っていく。

...ふと、葉狐は足を止めた。


(あれ...葉狐にお姉ちゃんって、居たっけ)


「どうしたのよ〜、早くおいで」


前にいた人が、だんだん見えなくなっていく。


「お姉ちゃん、もう...しん...着いちゃ...も早く...っしゃい」


(お姉ちゃん...お姉ちゃん...?葉狐の、お姉ちゃんって...だ、れ...)


そこまで考えた時、葉狐は意識を失ってしまった。

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