第8話 %$#&をください。
夜中になると、どこからともなく聞こえて来る。
「%$#&をください」
一体、何をくださいと言っているのだろうか。
いつも肝心な言葉が聞き取れない。
そんな話を孝にしたら、面白そうだから俺の家に泊まりに来ると言ってきた。しかも、太一や陽介や博にまで声をかけている。
これじゃまるで、肝試しみたいじゃないか。
男が5人も揃うと、ついつい飲み過ぎる。みんな、夜中になる前に寝てしまった。
翌朝、6時過ぎに目を覚ますと4人が何やら言い合いをしている。
「俺には、お前の目をくださいって聞こえたぞ」
孝が青い顔で話している。
「いやいやいや、お前の耳をくださいって聞こえた」
太一はそう言っていた。
「ちょっと待てよ。俺には、右足を下さいって聞こえたぞ」
陽介が言う。
「俺には―― 俺には、命をくださいって聞こえた」
博が泣き出しそうな顔で言った。
みんなが俺の顔を一斉に見た。
「——俺、熟睡していて何も聞いてない」
「あ~あれだ! 俺たち4人は怖い話で盛り上がり過ぎて、変な夢をみたんだ。きっと、そうだ。よし、帰るか~」
孝の言葉に、無理やり納得してみんなは帰宅した。
その日から、あの声は聞こえなくなった。
数日後、孝が両目を怪我して失明した。
その後、太一が両耳を野犬に噛まれて失った。
そして、陽介はバイク事故で右足を失う。
博は「次は俺が殺される!」そう発狂したまま、行方不明になった。
そんなことがあって、俺は孝とも太一とも陽介とも疎遠になってしまった。
あの夜、神社で買ってきたお守りを下げたまま寝てしまった俺だけが何も聞かなかった。そして、今も無事でいる。
でも、4人の友だちを失ってしまった……
月猫恐怖譚 月猫 @tukitohositoneko
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