黎明の詩
花野井あす
黎明の詩
落葉した
彼は家族と
燕は雨降るときも風吹くときも独り
何日も、何月も、何年も、
荒波の如き俗世に疲れ、渡る事も諦めた。
門出を祝う海原も、労苦を
空虚は色が無い。
誰かはそれを白と呼び、誰かはそれを透明と呼ぶが、燕はそれを黒と呼んだ。
すべてを受け容れるが、動じることもない黒。
燕は
ある冬の終わり、
すると何処からか鈴のような
声を辿れば新芽の萌えた
彼女は春の訪れを
静かに、高らかに。
その声は深く澄んでいる。
雨に打たれる日も風に追い立てられる日も彼女は
燕は
次第に世界がじんわりと滲み始めた。
燕は一筋の涙を流していた。枯れて乾いていた心が啼いていた。
燕は広い夜空には宝石が瞬いているのを知った。
大きなまん丸の
燕は
白く
楓が青々と生い茂る頃。
燕は遠い何処かへ旅立った。
黎明の詩 花野井あす @asu_hana
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