【エピローグ】吉備津神社にて


 鬼達の出航を見届けた後、僕達は備前の浜まで島で1番大きな船で送って貰った。

 この時代の道路事情はあまり良く無く、ヴェネツィア商人から買い取った交易品を載せた荷車の移動が大変なので、備前の港まで送って貰ったのだ。


 4人で荷車を押しながら備前の道を歩いていると、立派な神社が見えてきた。


「立派な神社だなぁ」


「モモタロウ様、ここは吉備津神社ですよ。

 幼い頃、おっとうに連れてきて貰った事があります。

 何でも将軍様が長い期間を掛けて再建されたって聞きました」


 と、キギスが教えてくれくれた。

 吉備津神社ということは吉備津彦尊様をお祀りしているんだよな。

 流石にスルーする訳にはいかないよな。


「すまないが、ここで荷物とポチの番をお願いできないか?

 御参りをしてくる」


「ワカリマシた」


「心配なので私は黒鬼さんと一緒にいます」


 黒鬼とおタミさん、アッツアツだね。


「俺っちはヤボじゃねぇですから、ふたりで行ってくんねぇ」


「え……、えぇっ?」


 マサル、お前ってば本当にいい奴。


「キギス、行こうか」


「わ、わかりました!」


 キギスは真っ赤になりながら付いてきてくれた。


 境内に入り、賽銭を収めてパンパンと柏手を打った。

 手を合わせてお祈りしていると目の前の景色がぼやぁとなり、次の瞬間、真っ白な空間に居た。


 これぞ異世界転移か?


『モモタロウよ、大義であった。

 我の願いをここまで受け止め、実現してくれた事に心から感謝をしよう』


 あ、吉備津彦尊様。

 これで良かったんだ。


『うむ、素晴らしき働きだったぞ。

 正にハッピーエンドに相応しい。

 天上の神々も涙して見ておったぞ』


「えっ?

 神様(複数形)に見られてたの?」


『桃太郎の題材は天界でも一大エンターテインメントだからな。

 はっはっはっは』


「勘弁して下さいよ。

 もしかしてキギスとのアレとかアレも見られてたの!?」


『ふっふっふっふ 、言わぬが花と言うやつじゃ』


 ズゥーン_| ̄|○⤵⤵⤵⤵


『どうだ、モモタロウよ。

 其方は今幸せか?』


 うーん、どうなんだろ。

 爺さん、婆さん、マサル、島民A、お頭、若 、……次々とこの世界で世話になった人の顔が浮かんできた。

 そして今横にいるはずのキギスが思い浮かぶ。

 心が暖かいもので満たされるのを感じた。


『モモタロウよ、この世界で幸せになってくれ。

 出来うる限りの手伝いはしよう。

 其方の幸せが今の我にとって1番の願いじゃ』


「はい!」


『……ところでだな、モモタロウ。

  頼みがあるのだ。』


「え、また何かするの?

 キツいのは勘弁して下さいよー。」


『イヤイヤ、大した事ではない。


 あのなモモタロウよ。

 其方に与えた勾玉だが……』


「あ、アレ。役に立ちました。

 LEDライトを持っていなかったのでホント助かりました。」


『え、エル!?……コホンッ!

 あの勾玉は『八尺瓊勾玉やさかにのまがたま』と言って国史に残る神宝なのだ』


「へぇー、大層な物だったんですね。」


『でだな……、返してくれんかの?

 勾玉』


「はい?」


『いや何、今は我の手を離れて所有者が別におってな。

 早い話がバレる前に戻しておきたいのだよ』


「いえ、そんな貴重な物だと知らず申し訳ありませんでした。

 鉄砲の弾が当たってキズが入っていたらごめんなさい。

 今すぐお返ししますので。」


『キ、キズは入っておらぬよな(焦)』


「お返ししますのでご確認ください。

 では、これにて失礼します。」



 スゥーっと意識が境内に居る自分へ戻ってきた。

 気が付くとキギスがオレの顔を覗き込んでいた。


「モモタロウ様、ずーっとお祈りしてましたけど、そんなにお願いする事があったんですか?」


「あぁ。オレはこの世界で幸せになる、って神様に報告したよ」


「ふふっ、変なモモタロウ様ですね。

 御参りに来たら、幸せにして下さいってお願いをするんですよ」


「あ、ああ、そうだな。

 確かに変だったかも知れないな。

 ならキギスにお願いをしよう。


 オレを幸せにして下さい。

 お願いします(パンパン)」


「はいっ!

 もちろんモモタロウ様には幸せになって頂きますよ。

 約束ですもの♪」





Happened 版『桃太郎』、おわり

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異世界・桃太郎 〜桃に乘ってやって来たこの世界はホントに『桃太郎』の世界なの?〜 藍甲イート @bocchii

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