第11話 エンディング
いつも通りの夜だった。
少しだけ、勇気を出して。彼の腕に抱かれた時に、自分から、その唇にキスをした。軽いキスだったけれど、彼はとても驚いていた。
「……どうしたんだ、急に」
いつも通りの荒い言葉づかいだったけど、どこか楽しそうに見えたから。シェリル様の言葉は、間違ってなかったんだと思った。
「なんでもない」
「そうか?」
恥ずかしくて、咄嗟に誤魔化してしまったけど、ジルは追求してこなかった。今でも、どうして彼が自分にだけこんな様子なのかは、分からない。シェリル様のお話だって、予想でしかないからだ。だけど、その理由は、多分どうでもいいことだ。
(後宮に入ったのだから、私がジルの奥さんであることは変わらない。だから、後は私がどうしたいか、だけだけど)
本当は、知っている。ここから逃げることも、帰ることも、その気になればきっと出来る。ジルは表向きには理想の王様なのだから、自分の感情だけで動くことは出来ない。故郷に攻め込むことだって、脅しとして言うだけで、きっと実行する気はないんだと思う。だけど、私は自分で選んだ。私は、ジルの隣に居続ける。それはジルのためじゃなくて、自分がそうしたいと思ったから。大変なことは、たくさんあると思う。死の危険性だって、きっとずっと、あり続けるだろう。だけど、ジルもいるし、シェリル様もいる。きっと大丈夫だと、私はそう思った。
田舎王女が帝国の後宮に入る話―人間らしくない王と、普通の女の子との恋の話― ワシミミズク @iicko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます