そこにいるのは

第1話

かつて友人だった人から昔聞いた話。

その友人は、ペット可のアパートで、犬一匹と猫一匹を飼っていた。

二匹ともに大人しくて飼いやすかったそうだが、ある日、二匹同時に天井の一点を凝視したのだそうだ。

友人も見たが、二匹の視線の先にはなにも見えなかったと言う。

なんだろうと思って二匹を見ていると、犬のほうは天井の一点を見つめながら、おびえた様子で後ずさりをはじめたそうだ。

ところが猫の方は怖がる様子はなく、それどころか自分が見つめる先に向かってジャンプし、見えないなにかを攻撃しはじめたそうだ。

それも何度も何度も。

友人が見ていると、突然犬のほうが怖がらなくなり、猫も大人しくなったそうだ。

二匹同時に。

友人は、そこにいたなにかが、いなくなったのだと思ったそうだ。

ところが次の日、猫の姿が見当たらなくなったそうだ。

さんざん探したがどこにもいない。

そして三日後。近所の空き地で死んでいる猫が見つかったと言う話だ。

　　　　　　　　　終