彼のこれまでに何があったのか

主人公の行動は清々しい程幼稚です。それがギャグの役目をしており、滑稽本かと思わされます。
 そして語りが一人称の為、若干の違和感、すなわち読者は彼への同調を拒絶したままの野次馬的読みを求められます。
 ところが最終盤、彼の生への執着、死への恐怖が垣間見えた所で三人称視点へ変わり、考えさせられます。
 彼は自分が道化だと実は気付いていたのでは?自己暗示で悟ったと思い込もうとしていたのでは?
 これが読者の置かれているメタ的状態と混ざり合い、本文に書いてある以上の広がりを作品にあたえています。
 とっても面白いです。