第50話 次はどんなダンジョンに行こうか(1章完)





「できたー!」


「おめでとー!」




【サターン・ステーション】を攻略してスキルを手に入れ、ついに≪ リソスフェアの心臓 ≫ を使った ≪ 竜媒りゅうばいジェネレーター ≫ を製造した。


 ≪ 竜媒りゅうばいジェネレーター ≫ は重量の割に高容量・高出力なハイエンドジェネレーターとなっていた。耐荷重が許すのであれば軽量搭乗式アームズから中量搭乗式アームズまで幅広く使える一品となった。


 もちろんゼンテイカに組み込む予定だ。四脚なので積載量には余裕があるし。



「うおおお……! これが、これがあればブースター使った高速度巡航とホバリングと水上移動ができるようになる……! 上昇はできないけど……!」



 上昇して空も飛びたい……飛びたいけど! 

 グランドリーフ以外の人型アームズで空中戦をしようもんなら、機動力を活かそうとすればパイロットはひき肉になるのでよほど高レベル冒険者じゃないかぎり無茶だ。かといって速度を落とせば良い的だ。


 空中戦なら普通に飛行機タイプの搭乗式アームズに乗った方が良い。「その辺の搭乗式人型アームズのレベルが低いの?」ではなく「いいえ、グランドリーフがおかしいのよ」である。


 というわけでゼンテイカで念願のブースターの運用を開始する。

 前から装備するだけならできた。けど手に入れられたジェネレータの都合で運用できるレベルではなかったし、推進剤の問題もあったので取り付けていなかったんだ。


 だがそれも今日までだ! 推進剤の問題も竜媒が解決してくれたしな! ほんとこれが大きい。


 というわけでさっそく組み上げる。新たなゼンテイカが完成した。



「うぅ……! 我ながらカッコいい……!」



 なんだか涙が出てきた。苦労したもんなここまで。


 ブースターのおかげで機動力が確保できたので、重量が増えるものの装甲を増やした。あと左腕の≪ ハツリパイル ≫ を機関砲に変更してW機関砲に変更したし、機関砲自体ももうワンランク上のものにした。

 両肩を占有するスナイパーキャノンはそのままだ。あとしずくはく「ヘルメットみたいでカワイイ」頭部パーツもそのまま。


 中遠距離戦に比重を置いた武装に変更したんだ。近距離戦は機動戦になりがちでゼンテイカは不利だし、そこまできたら自分で殴り合った方が良い。


 移動速度はブースターを併用した高速度巡航で時速130キロほど。オーバーテクノロジー系の搭乗式戦車型アームズである≪ホバータンク≫が150キロなのでだいぶ良いカンジだ。


 上昇こそできないものの、高所からの落下スピードを軽減できるし、足場から足場へホバリングで飛び移ることも可能だ。そして水上も滑るように移動できる。戦術は明らかに広がった。



 というわけで今日はジオラマに来ている。もちろんゼンテイカのテストのためだ。


 フィールドは[ 浜辺 ]。白い砂浜とサンゴ礁の青い海、眩しい光が降り注ぐ南国のフィールドだった。沖合に作った標的岩に向かって試し撃ちをした。

 テスト結果は上々。期待通りの仕上がりだった。



「後輩、来た」


「こんにちは!」


「おっ、先輩たち来たな」


「いらっしゃい!」



 ゆりあ先輩とリン先輩がやってきた。

 れいさんたちにOKもらったからジオラマに入れるようにしといたんだ。今日以外にも勝手に来て使ってるらしい。



 ちなみに今日はみんな水着だ。オレもしずくも先輩たちもな。


 だってせっかく南国風の砂浜だから泳いだりしたいし。



「後輩、今日はダンジョン産食材持ってきた。【稲妻いなずま高原】の≪ 落雷鳥らくらいちょう ≫ のお肉」


「えっ! 痺れるほど旨いっていうあの落雷鳥か!?」


「私が仕留めた」


「ひゅー! さすが先輩だぜ!」


「もっと褒めて良い」


「あ、私は近所で評判の和菓子屋さんのお菓子持って来ました。あとでどうぞ」


「ありがとーリンちゃん! 和菓子大好き!」



 というわけで泳いだりバーベキューしたりビーチバレーしたり砂浜に埋められたりしていたら、そのうちに黎明記れいめいき機械きかいの2人もやってきた。2人とも水着姿だった。



「やっていますね。お疲れ様です」


「お疲れ~、お酒持ってきたよ~」



 ……鳴司めいじさん、あなた方しかお酒は飲めません。



「ゼンテイカが改装されていますね」


「はい! おかげさまで!」


「ふむ……グランドリーフ」


『お呼びでしょうか』



 光さんの背後にグランドリーフが現れた。いつ見てもカッコいい。



「動かない相手では物足りないでしょう。くだんのジェネレーターには私も興味がありますので、少し動いてみませんか」


「いいんですか!? やります!」


「光さん、わたしもお願いします。ホバーバイクでどこまでやれるか試したいです」


「良いでしょう。まとめてかかってきてください」



 光さんがグランドリーフに乗り込んだ。そしてバリアが展開されたかと思うとふわりと地面から浮かび上がる。グランドリーフのこんな様子を間近で見られるなんて感激過ぎた。ずっと見ていたい気持ちを抑えてオレもゼンテイカに乗り込む。



『後輩、足を引っ張らないように』


『先輩こそ。ひっくり返って泣かないでくださいよ』


『……邪魔にならないように先に後輩を仕留めてもいい』


『待て話し合おう』


『かかってこないならこっちから行きますよ』


『『あ』』



 というわけでゼンテイカから降りるなり砂浜にぶっ倒れた。すぐ隣ではゆりあ先輩もぶっ倒れている。やっぱグランドリーフは格が違うわ。勉強になったけど完全に遊ばれもした。


「しゅー、そろそろほろほろ学習ようよ」


 雫がこちらを覗き込む……大福もぐもぐしながら。食べながら喋るのやめなさいって言ってるだろ。さてはリン先輩のお土産だな? 沈みかけた太陽(ジオラマ内だけど)のひかりが大福や雫の日焼けしていない肌をオレンジ色に染めていた。



「わるいわるい。でもさぁ……」


「?」


「楽しくってさぁ」


「……そうだね」



 手探りで始めた冒険者だったけど、なんだかすごいところまで来てしまった。


 呪われアームズとか大変なこともあった。けど憧れの冒険者と知り合ったり、冒険者仲間ができたり、誰も体験したことがないようなことを体験したりと、ここ最近はこれ以上ないほどに充実した日々だった。


 願わくば、こんな日々がずっと続いてほしい。もちろん命が第一だけど。



「お兄さんお姉さーん、光さんたちが花火持ってきてくれましたよー」



 リン先輩が呼んでる。行かなくては。それに花火か。さすが光さんたちは気が利くな。そろそろ暗くなるしちょうど良い。



「いま行きまーす。しゅー、行こ」


「なあ雫」


「?」



 呼び止める。背中を向けていた雫が振り返った。




「次はどんなダンジョンに行こうか」







 Fin.


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 お読みいただきありがとうございました!

 続きはネタが溜れば書きます(予定)。


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【スピンオフ・ショートエピソード集】酔っぱらい、攻略不能とされていたダンジョンを攻略してしまう 月啼人鳥 @gt_penguin

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