第38話 「銃は剣よりも強し」
しばらくミーシャと話していたら、一階の食堂が開いたので二人は朝食を食べに階段を下りた。
まだ人は誰もいなく、貸し切りの状態だ。
しかし女将は仕込みがあるのか一人でせっせと働いている。
「――あら、おはよう。
「ここのベッドが快適で早くに寝てしまったんです」
ハルトとミーシャの存在に気付いた女将はその手を止め、気さくに話しかけてきた。
しかし昨晩はいたうさぎ耳の少女が見当たらない。
「昨夜居た亜人の少女はいないんですか?」
「ああ、あいつはいつもこの時間寝てるのよ。全然起きないんだから!」
見た感じの年齢がミーシャと同じ彼女は、朝が強い方ではないらしい。
ハルト達は適当なテーブル席に腰を掛けた。
しっかりとモーニングメニューが用意されていて、その内容はワイバーンの卵のスクランブルエッグやベーコンなど、元の世界と似ている。
「ミーシャはどれにするんだ?」
「私はあまり朝お腹が空かないので…」
結局ハルトは目玉焼きとベーコンを、ミーシャはパンだけを頼んだ。
流石にまだこの時間はアルコールが出ないらしい。
10分ほどで出てきた料理は、まず
本来この時代なら香辛料は高級食材であるはずなのだが、この宿は少し高級な所であるからなのか普通に料理にかかっている。
詳しくレシピは覚えていないがマヨネーズも作ったら完璧なのでは…?
別にハルトは日本でマヨラーだった訳では無いが、やはり唐揚げにはマヨを付けたくなるときもある。
暇なときに研究してみようとハルトは脳内のタスクを一つ増やした。
ミーシャがパンにバターを塗り口に頬張っている時、リリが目を覚まし食堂に降りてきた。
まだ寝ぼけているのか浴衣が少しはだけている。
無言でハルト達のテーブルに座り、ただぼーっとしている。
「ちょっとリリ、服がはだけてますよ。
”破廉恥”などという
「――酒……酒は無うござりんすか」
「こんな時間から飲むのかい?残念、この時間はまだ無いよ!」
ハルトは木製のコップに冷えた水を注ぎ、リリに手渡した。
早く目を覚ませ、という意図を込めて。
「ぷはぁ~、昨晩は飲みすぎたでありんす」
冷水を飲んでやっと意識がシャキっとしたのか、その様子はいつものリリに戻った。
リリにメニューを渡すと、ハルトと同じ料理を女将に頼んでいた。
「――そういえばリリ、後で渡したい物があるから部屋で」
「ぬ、主様からの贈り物でありんすか?!」
ハルトの言葉を聞いたリリは目を見開いて食いついた。
今までリリには何もプレゼントしていなかったので、リリからしたらとても驚く出来事だろう。
リリは急いで料理を口にかき込み、早く部屋に戻ろうとハルトを急かした。
ハルトとミーシャは先に朝食を食べていたのでもう完食していたが、何もそこまで急ぐ必要は無いだろう。
「そんな、期待に
「――わっちは主様から頂けるものは、何でも嬉しいでありんす」
あの”魔食紅蓮丸”は魔力の温存、枯渇した時のリリの大いなる戦力となるだろう。
まだまだ改造の余地はあるが、ハルトはいつの日か銃を付けてバ〇ターソードにしてしまいそうだ。
「銃は剣よりも強し」ンッン~名言だなこれは。
しかしトンデモ超人が
ハルトはリリに腕を引かれるままに、部屋に戻った。
扉を開け、リリはすぐ床に正座をしてキラキラした目をハルトに向けている。
ここまで期待されると渡すのが小っ恥ずかしいな。
ハルトはアイテムボックスから漆黒の鞘に納められた”魔食紅蓮丸”を取り出し、伸ばしたリリの手のひらに乗せた。
「――こ、これは…」
「鞘から抜いてみて。慎重にね」
リリはこくりと頷き、
そして覗かせるのは緋色の鋼。
もはや芸術品として部屋に飾りたいくらいの逸品だ。
「それは”刀”って言って、多少の魔法なら反射するし切れ味もとんでもないから扱いには気を付けてくれ」
その刀身を目にしたリリは、思わずほぉーっと感嘆の息を漏らしている。
「――主様からのご寵愛、有難く頂戴致しんす」
「うむ、これからも精進するがよい」
改まって畏まられると変なノリになってしまうのだが、喜んでくれていたようでハルトは安心した。
やはり浴衣に刀はよく似合うな。
ハルトからもらった”魔食紅蓮丸”を、リリは白い紐でその腰に
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召喚された陰キャの物作りチート異世界ライフ〜家に代々伝わる言葉を入力したら、大量にギフトが届いたんですけど?!〜 橘 はさ美 @_Tachibana_
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