終演 銃後のピアニスト

 あれから5年が経った。久野にピアノを教わりながら、花音はコンサートを繰り返し、独り立ちしたのが2年前。世界一のピアニストを決める、ウィーン国際ピアノコンクールで準優勝したのが1年前。

 準優勝とは言え、間違いなく次回のウィーンコンクールで優勝するのは彼女であろうと言われるほど、花音のピアノの腕は世界で認められていた。


 ある時それを裏付ける様に、音楽の聖地であるベルリンでの演奏依頼が来た。音楽界隈では、ベルリンからの依頼=世界で認められた証と言われており、花音のピアノが、世界へ轟いたことの確たる証拠であった。




 そんなベルリンでのコンクールを終えた花音のもとには、たくさんのファンレターが届く。多くはドイツ語であったが、一枚、日本語で書かれた手紙がその中に混ざっていた。


 その手紙に差出人の名前は書いていなかったが、文章を読んでいくにつれて、花音はぽろぽろと涙を零す。


「……先生、久しぶりだね」


 手紙の文末に「。」はなく、ト音記号と五線譜が弾かれていた。

 

 一つの曲が終わったのなら、次の曲へと楽譜が捲られる。

 

 ここから新たな楽曲二人の人生が、音を紡ぎ始める――

                                  ――🎼

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託された者と残された者のためのピアノとハーモニカ交響曲 古魚 @kozakana1945

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