第50話 エピローグ

エピローグ。



地球に到着した時、メアリーはそれはもう大泣きした。


多分あの瞬間完全に心と体が一致して、本当の意味で帰れたのだろう。



その話をするととんでもなく怒るので禁止カード扱いなのだが、堪えきれずに涙が溢れてしまうみたいな大人びた泣き方の多かったメアリーがギャンギャン泣き喚く姿こそ多分取り戻さなきゃいけなかったもので、あれこそがきっと成功の証だった。



「メタニン、追加パーツ。なるべく内緒ね」

「ありがとうメアリー!」


私の改修が終わってからも、メアリーはこっそり色々作ってくれる。


今の私には特別な力が無く、体の頑丈さもまぁ程々だ。

でも自分で決めた目標がある。それに親として協力してくれているらしい。



『どでかいジェットパック背負わせて何が内緒だ』

『あるじ、ミナをまたゲーム内に誘っておいてクレ』


メアリーが肌見放さず持ち歩いている端末には、ハカセとメテオタベタラーがインストールされている。


元々ハカセは端末なので全く違和感が無いらしいが、メテオタベタラーは暇に耐えきれず仮想世界でゲーム三昧らしい。



外に飛び出ると、ちょうど白い光が空を駆け抜けていく所で、それを追いかけるように早速私も貰ったばかりのジェットパックを試す。


……最初、音のセンサーが壊れたのかと思った。


多分、あとで爆音問題と速度を下げる調整が必要になると思う。



「大丈夫かメタニン!?」


気がつくと、私は墜落したあとナインの機体に拾い上げられていた。本人は自覚が無いが、本当にいつもいつもここぞという時にちょうどよく助けに来てくれる。


私の自慢の彼女だ。既にプロポーズまでされているので自慢のパートナーでもいいのかも知れない。



「今日こそ追いつけるかと思ったのに」

「次は先にテスト飛行しておいてくれ」



そのままコクピットに入れてもらって、一緒に目的地へと向かう。


白い光が最速で駆けつけた先。


ヒーローが必要とされている場所に。



「メタニンちゃん!」


私に気づいたミナの声が通信を通して届く。


無敵のエースにして、私の最初の友達。既にプロポーズされているので大事なパートナーでもいいのかも知れない。



「ミナ!速すぎるよ!」


新たなチームが結成されてから今まで何度も緊急要請を受けてきたけれど、一度たりとも事件の主原因と対峙したことが無い。着くと大体ヤバめな何かが壊れた後なので、補助や事後確認しかしていない。


あの時、有耶無耶に見落とされた白銀の機体。


ナインの黒めのケンタウロス機体もまぁまぁ機能が盛られすぎているが、こっちはもうオーバーテクノロジーの塊な上に強すぎるという大問題の機体。


今もその白銀の機体に乗るミナは私達への要請に対し真っ先に飛び出し、普通の部隊では手に負えない難敵や障害をとりあえず丸ごと消滅させてしまう。



「でももうだいぶ遅くて、正直白い機体と大差無いのよ。操作性が私にとっての理想すぎて手放せないけど」


一応、あの工房が消えたのが制限になってはいる。あそこでしか充填できない謎のエネルギー利用物や整備する手立てのない装備はもう全て現代のパーツに置き換えられているので、元の白銀そのものの強さではない。私にとっても最強の兵装だった便利バリアも再現不可能になってしまった。


それでも頑丈で速くてチート機体としか思えないのだが、ミナが乗らない限りここまでの力が発揮されるわけでも無いので、脅威に関する約束から解放された今の私にはどうにも大丈夫な強さなのかどうか判別出来ない。絶対相手チートだよと思ったら普通に手動だったみたいな感じにミナ相手だといつもなる。



メアリーの事件に関する色々なあれこれが下手に掘ると大火傷しがちなのと、見かける場面が地球防衛隊と協力しての難事件解決のみなので下手に邪魔した場合の責任が重く、結果的にありとあらゆる関係者が何も選ばないという消極的な選択を取りやすい。


それを良いことにミナは公然と乗り回し続け、今となってはもう完全に白も白銀もついでにナインの黒も丸ごと曰く付きのテスト機扱いにされている。



「防衛隊との連携と広域調査はボクが。リンクするからメタニンも頼む」

「了解!」


コクピットを開けてもらって飛び降りる。



私達は主に地球防衛隊からの依頼で特別派遣されるスペシャルランサーズ。


フリーランサーとは違い自由に使える槍では無く、特別難しい事件発生時に切り札として放たれるスペシャルランス。


まぁ、色々抱えて生きていこうって言うんだから色々な都合とか事情もあるのだけれど、私達はみんな元々何かを守ろうとして出会ったわけで、自然とこういう感じになっていった。



危機を絶対に覆す最強のエース、ミナ。

それを補佐し、多方面と連携して自分も動く、頼れる働き者のナイン。


重大な危機に突如現れる白銀と黒のレスキューヒーロー。



そして私。


その二大ヒーローと共に、現場で修行中のロボ。



「見習いヒーローモード、起動!」



見習いヒーロー、メタニン。ただのメタニン。


今の私には特別な力が無く、体の頑丈さもまぁ程々。

最近メアリーのおかげでちょっと出来る事が増えてきた。


色々な人の協力で、好きな人達と好きに暮らせるようになった。自分で選んだ道を自分で進んでいいよって皆に支えられて、自分の足で前に向かって歩き出した。



プログラムされた何かの為じゃなく、自分で考えて生きるようになった。



今は、憧れた背中を追いかけている。

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スーパー人類ロボ・マジカル=メタニン 偽もの @nise_mono_e

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