第4話

道中、ヒドクヘビやモクメといったモンスターが飛び出してきたところを轢き殺したりしたが得にも問題なく着いた。


少し離れた位置でマキシマムの中から眺める


やっぱり長蛇の列だな。


火山と温泉の観光地であるヴォルカノはただでさえ金持ちが休暇に来たり、冒険者が薬湯に療養へ来たり、商人が商いに来たりと人が多いのに、今日は15年に一度行われる式典『炎煙祭』があるからそれ目当ての人々で街に入るための受付が渋滞している。


しかし、これは無視していい。もうそろそろで来るはず……。


「わぁ〜〜〜!!た、助けてくださ〜〜い!」


ほいきた。ストーリーイベントの外回り担当の兵を助けるイベントだ。


「テロメア。おねがいね」


テロメアにそう言うと、扉を開けてマキシマムから出ていき救出に向かっていった。


「マキシマム。俺達も追いかけるよ」


マキシマムは声に反応してテロメアを追いかけていった。


声の距離からはそこまで遠くはなかったのですぐに到着した。

そこにはニトロベアと対峙しているテロメアとニトロベアに背を向け地面に蹲っている兵がいた。


ニトロベアが腕を振るう度に周囲の火の粉が舞い散り木々が燃えている。

テロメアはその火をファイアドレインで吸収しながらニトロベアの腹や足に殴打や蹴撃を与えている。


今テロメアが使用しているファイアドレインだが、本来は1ターンの間味方全体に火属性吸収を付与するものなのだが、実際に見てみると自分の意志で好きなように操れている。


これを見るとゲームの時の効果と違う効果を発揮するスキルはかなりありそうだ。


「テロメア!終わらせていいぞ!」


俺が声を掛けるとそれを聞いたテロメアは色欲状態に移行して、デススピアを使った。


テロメアの尾は視認はできるが姿がブレるほどの速さでニトロベアの腹を貫き宙へ持ち上げた後、勢い良く地面に叩きつけた。


叩きつけられたニトロベアは尾を刺された腹部の傷の周りから黒い煙となって消えて行き、最後に太い爪を一本残していった。


「よくやったもう良いぞ」

「で、大丈夫ですか?」


テロメアを労った後、蹲っている兵に向かって声を掛ける。


「は、はひぃ。たすかりますぃたぁ…」


恐怖と色欲状態のテロメアの影響か、涙と鼻水、汗やよくわからない汁でグチャグチャの顔でこちらを見てお礼を言ってきた。


「いえいえ。困っている人がいたら助けるのは当然ですよ。」


「良い人ですね。それに強い。兵隊なのに僕は情けないなぁ……アハハ」


因みに今のはゲームの選択肢をそのまま言っただけだ。2つありもう片方が「困っていたから助けたが貴方、兵隊だろう?こんなザマで務まるのか?」というクソ野郎ムーブもできる。



「あ、そうだ。お礼と言ってはなんですが僕の推薦で街に入れてあげます!!」


きた。このために助けたんだ。これが回復アイテムとかだったら無視して並んでた。


「本当ですか?助かります!ありがとうございます!!」


「でも、そちらの大きい人造系モンスターはキューブに収納してもらえますか?キングゼブラやクン・ホㇿケウ程の大きさなら大丈夫なのですが、そちらモンスターは大き過ぎますので街中への侵入、召喚は禁止されているんです。」


「わかりました。」


……うーん。出せるなら戻せそうだけどどうだろうか。


とりあえずシードタワー接続アプリを起動する。


モンスター一覧…召喚中モンスター…お!!あった召喚中モンスターのアイコンをタップして牧場に戻すをタップでいけそうだ。


「マキシマム。また後で呼ぶからよろしく。今は休んでてくれ。」


そう言ってマキシマムを戻した。

マキシマムは白い光に包まれて端から徐々に消えて行った。


「ありがとうございます。では行きましょう。」


いつの間に拭いたのか、目の周りは赤いがタレ目で可愛げのある顔で愛想の良い表情をこちらに向けて言った。



兵用入口までの道中。


「そういえばお名前を聞いてなかったですね。僕はヴォルカノ護衛隊外周下級兵ウォルファーノです。お名前は?」


「あーっと。俺の名前は…」


どうするか。本名かPNか。……本名でいいか。


「翔太です。」


「ショウタさんですか。ありがとうございます。」

「ショウタさんはモンスターを使役しているのでマスターかサモナーですよね?」


「ええ。マスターですね。まぁ、まだ登録していないので非正規ですが。」


「えぇ!?未登録なんですか?!!」


「この街でやろうと思ってて」


「あー。なるほど。じゃあその手続きもやりやすいようにしておきますね」


「え!良いんですか。ありがとうございます。」


「いえいえ、でで、これからのご予定は登録以外には何を予定してますか?」


「そうですね。まずは宿決めと冒険者登録、あぁ後炎煙祭を見ますね。」


「おぉやっぱり。炎煙祭ですか。少しネタバレしますとですね……今回の方は炎煙の贄姫と呼ばれている少女なんですよ。」


「ほう。」


「一度見かけたことがあるのですが…とても可憐で美しい方でしたよ。オーナクロヴ様も満足してくれそうです。」


「ほうほう。それはそれはもう暫くは安泰ですね。」


「そうですね。子どものときは可愛そうだと思っていましたけど大人になった今では感謝と尊敬で一杯ですよ。」


「へぇ~」


「さて、着きましたね。ここで少々お待ち下さい。」


「はい。わかりました」


ウォルファーノはそういうと、赤塗の木扉の中へ入っていった。


約15分後


暇潰しに次に出すモンスターを吟味していた所声がかかった。


「お待たせしました。」


木製のトレイに紙や木製の物を乗せて扉からウォルファーノが出てきた。


「まずは、コレ。滞在許可証である木簡です。これが無くなったらどこの観光地にも入れず、街からも追い出されますので無くさないように。あと、街から出る際は門兵に返却して下さい。」


そう言って手の平サイズの木の板を渡して来た。木の板にはこの世界の言語で文が彫られている。


「次に、このマスターギルドの推薦書です。これを受付の際に渡せば色々と省いて登録できます。最後に冒険者ギルドの推薦書です。これもマスターギルドの推薦書と同様です。無くさないようにしてください。」

「渡す物は以上ですので、ここから街にお入りください。」


「ありがとうございます。」


俺を言った後、兵用の通路を通って街に入っていった。


中に入り、薄暗い裏路地から少し歩き本道へ出る。


「おぉ!凄いな。ゲームの風景でもキレイだったのに実際に見ると格別だ。」


奥には赤茶色の火山。その一つ手前に湖ほどの大きさの温泉。その周りからこちら側に向かって延びる商店や宿屋、料理店。


火山とカルデラ温泉と人工物の調和が取れた風景。素人ながら素晴らしい景色だと感じる。


さて、宿の前に金が無いから冒険者ギルドにいこう。次にマスターギルドにいって登録者限定の割引権を手に入れて宿屋の順だな。

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ゲームは好きだが入りたいとは思ってない Hr4d @Hrad

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