おぞましい脅威と人々の情で彩られる屈指のダークファンタジー

まず間違いなく、名作の部類に入る作品です。
物語の主人公は記憶を無くした少年であり、異世界を旅していくという設定はありふれているでしょう。すごい異能や可愛いヒロインも登場するとなればなおさらです。

しかし、この物語は毛色が違います。
記憶はそう簡単に戻ることはなく、主人公に与えられた異能は強いですが、この世界にはもっと強い敵がゴロゴロしています。
そう、これは異世界で自分が生きていくために足掻いていく物語なのです。

見知らぬ土地で、知識も記憶もない少年は、一人では生きていけません。
それでも、助けてくれる人との間に紡がれる確かな絆があります。
ヒロインは主人公に冷たく接してきますが、それにもしっかりとした理由があります。
主人公は、そんな人々のなかで葛藤し、思い悩み、やがて自分だけの答えを出していきます。
このタイプの主人公にしては珍しく、自立しているのです。

そして、素晴らしいのは戦闘描写です。
主人公の出会う敵の数々は、どれも強敵でおぞましく、ダークファンタジーに相応しい醜悪な敵たち。
仲間と力を合わせて、異能の力を存分に使って、やっとのことで命からがら生き延びる……そんな戦闘が続きます。サクッとした無双ではありません。
だからこそ熱くなれる。
この物語はそういう人に向いています。

ぜひ一読してみてください。
謎が謎を呼ぶ展開に、初めは困惑するでしょう。
しかし、重厚な世界観にあなたはいつの間にか虜になっているはず。
第一章を読み終われば、私がここまで本作を薦める理由も自ずと分かるはずです。

最高でした。

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