尋問編~ほんとのこと、教えて?~

//SE スミレが近づく音


(刑事のように少し低いトーンで)

「まずは虚偽罪について、説明してもらおうか」


(ゆっくり助手の顔近くを回り、真後ろから洗脳するように)

「どうだい。体の自由を奪われ、視界を奪われた心境は?君が僕を認識する方法は音だけだ。今、僕がどこにいるか分かるかい?そうだね、君の真後ろだよ。だけど、次第に前後の感覚すら曖昧になって、僕のことばかり考えるようになるだろうさ」


助手は別に怖くはないと強がる。


「じゃあ、これはどうだい?ワトソン君」


(左耳にゆっくりと囁く)

「耳元で、こんなに囁かれる状況なんて滅多に無いでしょ。他人に聞かれたくない密談か、恋人の睦言か、あるいは洗脳か。どきどき、してる?確かめてあげる」


//SE スミレが助手の胸に耳をあてる音


(素に戻って楽し気に)

「ふふ、心拍数があがってるね。心臓爆発しちゃいそうじゃない?」


慌てた助手がそっちはどうなんだ!と反抗する。


(小声で少し恥ずかしそうに)

「えぇ、僕?しかたないな、出血大サービスだからね……」


//SE スミレが助手の頭を抱きかかえて、耳を胸に押し当てる

//SE トクトクトクと小さくもはっきりと心臓が早鐘を打っている


(とても恥ずかしそうに、消えそうな声で)

「ねぇ、聞こえる?私の心臓の音」


スミレの緊張が伝わった助手は、すごく早い。と思ったままのことを口にする。


(限界ギリギリで堪えながら)

「うん、私も爆発しちゃいそうだよ」


(スミレの本音で助手の理性を溶かすように)

「…ねぇ、もっと僕のことを考えてどきどきして、もっと、僕に夢中になって?」


二人とも何も言えず5秒ほど沈黙。


(ふと我に返ったスミレが照れ隠ししながら)

「あはは、あっついや。おーしまいっ」


(深く深呼吸をして、声音を元に戻して)

「ふぅ、満足したぁ。それじゃあ、取り調べを始めようか」


//SE トン、トンと歩く音


(ゆっくり助手の周囲を歩きながら)

「君は、2月14日ヴァレンタインの日。僕にお菓子を貰った。そうだね?」


(後半すこし強調して)

「その時にもらったお菓子は覚えているかい?うん、4個入りのマカロンだね。あれ、たくさん試作したんだからね」


(助手の言葉は少し吐息交じりに気障に)

「そして、君は感謝の言葉共に僕にこういったはずだ。「もうスミレ以外の人が作ったお菓子は食べません」と」


助手がそんなことを言った覚えはない!と否定する


(悲しそうにしながら)

「え?ちがう?じゃあやっぱりあの言葉は嘘だったんだね…」


助手はスミレが内容を誇張していると主張する。


「えぇ、言葉の内容?そりゃ少し意訳があるかもしれないけど、べつに大差ないでしょ」


助手がツッコむのに対して、スミレは少しムッとする。


(お仕置きを強調して助手の正面から近づきつつ)

「まったく、反省の色が全然見えないな。そんな悪い人にはお仕置きが必要だよね」


//SE スミレが手を動かすたびに布が擦れる音


(ゆっくりとしたテンポで焦らすように)

「いま、どこを撫でられてるか分かる?そう、太ももだね。外側はそんなに違和感ないかもしれないけれど、ゆっくり内側に入っていくと…あは、ビクッてなった。ほら、ほら。ここくすぐったいでしょ。ただゆっくり撫でられてるだけなのにねぇ。不思議だよねぇ」


助手が耐えられなくなり、太ももを閉じてスミレの手を摑まえる。


(感心しながら、助手の身体をゆっくり体感しつつ囁く)

「こら、股閉じないの。んん、やっぱり男女差を感じちゃうね、筋肉って。私の内ももと全然違う。なんだか弾力があって、肉食獣って感じすらする……」


(バッと飛び退きながら声を一気に明るくする)

「……あ、今へんなこと考えたでしょ。息が浅くなってるよ。はい、おしまーい!なんか、身の危険を感じましたー!」


(助手に聞こえるか聞こえないかくらいで少し冗談めかしながら)

「ふぅ、これは危険だね、私までおかしくなりそうだよ」


「まぁ、たしかに君の言う通り、先ほどの僕の言葉には少し誤解を招く表現があったかもしれない。訂正しよう。君はこう言ったね「部長のマカロン以外ヴァレンタインで受け取ってないですから」と」


助手が頷く。


(寂しそうに、少しずつ声をフェードアウトさせて)

「うん、間違いないね。僕はこの言葉を聞いたときとても嬉しかったんだよ。君の特別みたいで。それなのに君は…」


//SE 右の耳元に近づいて息を吹きかける

(優しい笑い声を含ませながら、吐息多めで)

「ふー。ふふ、そんなにビックリしなくていいじゃん。たださっきまでと逆の耳ってだけだよ」


(ゆっくりと囁き、交互にのところで一度左の耳で囁いて、戻ってくる)

「さっきまでと同じ声、同じ音なのに、感じ取る耳が逆になるだけでまるで新鮮な体験ができる。このまま、交互に、囁かれつづけたら、いずれ平衡感覚すらなくなるかもしれないね」


(核心をついて、恐怖心を煽るように低めの声で明確に)

「ねぇ、バームクーヘンって、なんの事?」


(怒りを抑え込むように粛々と)

「君はヴァレンタインって単語に反応して、僕からもらったマカロンよりも先にバームクーヘンと口にした。これは誰か別の人からもらったんじゃないのかい?」


(不安げに)

「…私のマカロンより、おいしかったの?」


(圧をかけるというよりは懇願するように)

「ねぇ、答えてよ。ワトソン君。ねぇってば」


(すねた声で)

「…言わないならもっと苦しくしてあげる」


//SE 爪で肌をなぞる音


(ゆっくりと限りなく近い距離で息を多めに含みながら、ゾクゾクさせるように)

「ツツー。答えないと、ずーっとこうやって鎖骨を爪の先で撫で続けるからね。気持ち悪いでしょ、これ。ゾクゾクするでしょ。やめてほしかったらちゃんと教えてよ」


「ねーぇ、他の人からヴァレンタイン、もらったの?」


(期待させるように)

「もらってないの?ほんとに?…これでも?」


(正面に回っておちょくるように)

「こちょこちょ~~、こちょこちょこちょ~」


(明るく楽しそうに)

「ここは王道だよね、脇腹くすぐりぃ~‼」


助手は身じろぎして声を堪える。


(不服そうな声で)

「んんん?なんか思った反応と違うなぁ。もっと笑い転げると思ったのに、そんな堪えるようにされたら面白くないじゃないか」


助手が緊張で口が乾いている、水が飲みたいと頼む。


(呆れつつ)

「んん?なんだって?えぇ、喉が渇いたぁ?被疑者が良い御身分ですねぇ、まだ何も容疑が晴れていないのに、よくもそんな要望が言えたもんだね。まったく、相変わらず鋼のメンタルをしているんだから…」


「まぁ、水くらいなら飲んでもいっか。あ、でも手を自由にはさせないよ。当たり前じゃん。力勝負なんかされたら僕は君に敵いっこないんだから」


(意地悪そうに)

「え?どうやって飲むってそんなの簡単じゃん。僕が飲ませてあげる」


//SE スミレが鞄を探り、水筒を取り出し蓋を外す音


(子供にいうように)

「ちょっとまっててねー、僕の水筒でいいよね。はい、零れないようにゆっくり飲ませてあげるからねー」


(少し上の位置から)

「おくちあけて?もっと大きく、そう…もう少し上向いてよ。頑張って飲むんだよ」


//SE 少しだけ水を口の中に注ぐ音

(上から覗き込みながら蔑むように)

「ん、そのままにしておいて………ふふ、なさけなーい」


助手は遊ばれたことに憤慨してすぐに口を閉じる


//SE 水を注ぐ音

(心底楽しそうに、助手を納得させるように)

「えぇ?口閉じないでよ、ペットボトルのキャップ一個分くらいしか飲んでないじゃん。ほら、もう一回、あーん。ふふふ、おいしい?僕に飲ませてもらうお水は格別でしょー?こんな、拘束されて、目隠しされて、水を口に入れてもらうなんて特殊プレイ、僕しか受け入れてあげられないんだからね」


(矢継ぎ早に)

「はい、おしまい。喉は十分潤ったかな?うんうん、なら何よりだ。で、バームクーヘンて何のこと?」


(加速度的に狂気を増加させて)

「忘れるわけないじゃん、もう言い訳も変なノリもやらないからね。言うまで絶対解いてあげない。ねぇ、バームクーヘンもらったの?誰に?家族からも貰ってないって言ってたから、クラスメイト?学外の人?ねぇ、だれにもらったの…?」


助手は観念して、自分の鞄を持ってきてくれと頼む。


(何がなんだか分からない様子で)

「うん、カバン?君の?えっと、はい、今僕の手元にあるよ。いや、何かとって欲しいんなら僕が出してあげるから。うん、じゃあ開けるよ」


開けたカバンの一番上に形が崩れないように置いてあったのは、バームクーヘンだった。

//SE お菓子の袋を取り出す音


「えっ、バームクーヘン!?どういうこと?」


助手が、スミレへのお返しだと答える。


(困惑しながらも、ハッとしたように)

「へぁ、わたしに?え、今日?あっ、ホワイトデー!!」


(うれしさと驚きでイントネーションがブレブレになりながら)

「わぁ、わぁあ、これ僕へのお返しってこと?えぇぇ、全然気づかなかった…」


(最も優しい声で)

「そっかぁ、私にあげることばっかり頭にあったからバームクーヘンって言っちゃったんだ。ふふ、君のそんなポンコツなところ初めて見たよ。いつも私がやらかしちゃうばっかりだったから。そっか、緊張してたんだぁ。ありがと、すっごく嬉しい」


(感動しつつ)

「わぁ、すごいなぁ、好きな人からもらうお返しってこんなにうれしいんだ……あれ?これもしかして手作り?」


「えぇぇ、すっご!?バームクーヘンって作れるものなの!?」


(急にギャルみたいに声の抑揚を強調して)

「はぇぇ、いつも君は僕の想像を超えてくるよねぇ。こんなの大事過ぎて食べられないよ…どうしよう~!」


「でも、なんでわざわざバームクーヘン?手作りなら他に簡単なのたくさんあったでしょ」


助手は目線を反らし、再び沈黙。


「ああー、また黙った!でもその感じ、君、照れてるね?…じゃあ、あ、分かった」


//SE スマホのタップ音


「んーんと、なになにー?バームクーヘンを異性に贈る時の意味は……長寿祈願、結婚祝い…えぇ、ぷろぽーずってこと!?」


ちがうっ!?と大声で助手が否定する。


「そ、そうだよね流石に違うよね…あっ」


(何かを探りつつ、正面からゆっくり近づいて)

「…ねぇ、バームクーヘンをホワイトデーに贈る意味、知ってるよね」


スミレは助手の上にまたがり、腰を下ろす。それに慌てつつも完全に助手がフリーズする。


//SE スミレがぽふっと上に乗る音


助手は震える声でどこに座ってるんだとツッコむ。


(少し照れつつ、誘惑するように)

「んんー?どこに座ってるのって、君の太ももの上だよ。分かるでしょ」


スミレが助手の肩に手を置き、鼻が当たるかどうかという距離まで接近。


(浅くなりそうな息を必死に抑え込みながら、溢れる気持ちを堪えながら、もどかしく)

「そうだね、近いね。うん、すっごく近い。お互いの呼吸が交ざり合うくらい。いままで、向き合って座ったことは無かったもんね…そりゃ私も照れくさいよ。でも、一番近くで君のことを感じたくなっちゃったんだもん。仕方ないよね?」


(少し間を開けて、前よりはっきりと)

「君だって嫌じゃないでしょ?だって―」


(ずっと一緒にいたい、で区切って)

「―”ずっと一緒にいたい”んだもんね?」


//SE そわそわと揺れる音


(期待した気持ちを表現し、プレゼントを待つ幼子のように)

「ねぇ、これってさぁー、これって、勘違いしちゃっても仕方ないような贈り物だとおもうんだよねぇ」


//SE スミレが腕を助手の頭に回す音


「んん?首に手を回してるんだよ。なんでって、まだ3つ目の容疑の取り調べが終わってないじゃん」


(スミレは吹っ切れて、煽るように)

「隠蔽容疑。君、ずっと私に本心隠してるでしょ。ねぇ、もう言っちゃおうよ」


「私はこーんなに分かりやすく表現してあげてるんだよ?向き合って座って、ぎゅってして、耳元で話しかけるなんて、君にしかしたくないって分かるよね?」


(助手の本心を覗き込むように囁いて)

「ねぇ、教えて?君のほんとの気持ち。じゃないと、バームクーヘンで勘違いしちゃうよ」


助手がわかってるだろと小さく反論。


(絶対に逃がさないという意思を示して)

「だめ、ちゃんと言葉にして欲しいから。じゃないとほんとに結婚したいっていうプロポーズだと認識しちゃうよ?明日婚姻届け持ってきちゃうかもしれないんだよ?」


(耐えきれなくなって)

「ほら、言って?二文字だけでいいから」


(ゆっくり誘導)

「きみは、私のことが―」


「――」


(にやけながら、ずーっとを強調して、少し涙声で)

「ふふふ、うん、正解。ふふふ。知ってましたー。ずーっと、ずーっと前から分かってましたー。ずーっと待ってたんだよ?口にしてくれるの。待たせすぎだからね」


(大層満足した、と思わせるように。ここで終わりだと錯覚させるように)

「さーて、取り調べはおしまいかな。君の容疑は晴れて、無罪放免です!私もずっと聞きたかったことが聞けてとっても満足です。でも開放する前に、もう一つだけ」


助手が一息つく。


(耳元で囁く)

「冤罪でたくさん怖い思いをさせたお詫びをしなきゃいけないね」


(熱っぽく)

「ねぇ、ワトソン君?君も気になるよね、私の本心」



「―す、き」


(耳元から離れて、嬉しそうに)

「ふふ、ビックリした?それとも期待してた?えぇ、分かってたー?ほんとかなぁ?」


助手はさっき自分で言っていたと指摘する。


(大きく動揺して)

「へ?言ってた?さっき?え、うそ」


(大声で)

「私、”好きな人からもらうお返し”って言ってたの!?」


(声を震わせながら捲し立てる)

「うわっ、たしかに言った気がする…え、じゃあ君、勝ちが分かってた告白をしてたの?さいてい!詐欺師!このっ、あくまー!!」


//SE ドンドン、と胸を叩く音


助手が痛いと主張。


(恥ずかしさに耐え切れず、胸に顔をうずめながら)

「うるさい、君頑丈なんだから胸を叩くくらいなんともないでしょ!」


(半べそをかきながら)

「うぅ、なんか、なんか負けた感があるよぉ」


(しばらく考える間を開けて)

「………よし決めた」


(必死に言葉を紡いで)

「ねぇ、助手君、私の依頼、叶えてよ。うん、そう依頼だよ」


(恥ずかしそうに、それでもちゃんと正面から)

「…ちゅう、したい」


助手は大声で驚く。


(小さな声で肩に顔を埋めながら)

「うるさい、静かにして」


(お互いへの言い訳のように囁いて)

「…好きって、言ってたもんね。私、好きって、言ったもんね」


(再び顔をゆっくり近づけて、近いことを分からせるように呼吸を感じさせながら)

「好き同士なら、いいよね?」


(触れるか触れないかの距離で焦らして)

「口、閉じててね……」


//SE キス


(幸せそうに)

「ふふ、だいすき」

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ホームズはスミレ色~二人きりの部室で尋問です。君は私の助手だから!!~ 庭月穂稀 @Niwa_hotoke

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