ホームズはスミレ色~二人きりの部室で尋問です。君は私の助手だから!!~

庭月穂稀

疑惑編~うわぁぁぁ、私の助手が浮気したあああ~

//SE 教室のドアが開く音

(少し慌てた様子で、呼吸は大きく)

「はぁ、はぁ、助手君、遅くなって申し訳ない。スミレ部長様っ、いや、名探偵ホームズ、の到着だよ!僕はいつも、ワトソン君、君を待たせてしまっているね」


//SE こちらへ足音が近づく

「え、遅くなった理由かい?」


「…あ、そうだ、ねぇ聞いてよ!私やっぱり数学の森Tモリティーに嫌われてると思うの!」


//SE 鞄を机の上に置く音と、スミレが隣に座る音


スミレがソファまで来て、助手の右隣に座る。


「さっきね、もうすぐ今年度が終わるっていうのに、HR終わりにわざわざ私の教室まで来て『おい、ほーむずぅ!学年末テストのやり直しを回収して俺の机の上にまとめて置いておいてくれぇ!』って大声で言ってきたんだよ!」


//SE バタバタと足で床を叩く


「そりゃさ、ホームズって名乗ってるのは私だけどさ、別に呼ばれるのは構わないんだけどさ、言い方が嫌らしいんだよ!『ほーむずぅ』って、『ほぉむずぅ』って!ホームズの名前に対する尊敬が一ミリも感じられないんだよね」


//SE トントンと、指で腕を叩く

(グチグチと普通の女子中学生らしく)

「それに、そんな内容なら6時間目にあった数学の授業終わりに言えばいいじゃん?放課後になってから言われても、早い人はもう教室を出ちゃってるんだしさ。そのせいで私は靴箱まで全力疾走しなきゃいけなくなるし」


「というか、数学担当の生徒が各クラスにいるんだから回収くらいその子に頼めばいいのに。私が学級委員だからって言ってるけど、絶対意趣返しだと思うんだよね!」


//SE バッとこちらを向く音


スミレが身を乗り出して助手に顔を近づける。


「君は大丈夫?森Tモリティーに嫌がらせ受けてない?」


助手は少し身を引きながら頷き、それを見てスミレが身を引く。


(徐々に不満げに)

「まぁ、何も無いならいいんだけど…いや、まって。それはおかしくない?体育館倉庫密室事件で森Tモリティーが倉庫のカギをうっかり自分のポケットに入れたままだって気付いて指摘したのは君だったじゃん。なんで私だけこんなに目の敵にされなくちゃいけないのさ」


助手はスミレの自業自得だと言ってスミレを突っぱねる。


「うっ、いや、まぁたしかに意気揚々と『犯人はあなたです!モリアーティ!』とは言ったけどさぁ。あれは森Tモリティーの名前がモリアーティみたいだなぁっていつも思ってたせいというかぁ、君の推理が完璧すぎたせいというかぁ、じゃあやっぱり君のせいじゃん?」


//SE 立ち上がる音


助手がかばんを持ってソファから離れ、スミレが慌ててドアの助手の手を引っ張る。


「わー、うそうそ。私が全面的に悪かったです!つい調子に乗り過ぎました!だから、帰ろうとしないで!ほら、しっとだぅん、しっだん~!」


//SE ぼふっとソファに座る音

助手が再びスミレの隣に引っ張り戻される。


「でもやっぱり理不尽だと思っちゃうじゃん。おかげでまた部室に来るの遅れちゃったし」


助手が話題を変える。


「えぇ、今日の活動…?」


(駄々っ子のように)

「うぅぅ、もう疲れましたー。体の限界ですー。くたくたでソファに座るのもままなりませーん。隣に座っている助手君はおとなしく私の枕になるべきだと思いまーす。」


//SE スミレがぽふっと頭を太ももに預ける音

スミレは仰向けで助手に膝枕をさせる。


助手はいつものことで受け入れるが、部活までがんばってくれと零す。


「がんばれだぁ?」


「無理でーす、そんな軽い励ましの言葉じゃホームズは動けませーん。名探偵ともなるとビッグな報酬か、誰もが匙を投げるような難解な事件じゃないと一歩たりとも動かないものなんですー」


助手が副部長権限で今日の見回りに行こうと無理矢理引き剥がそうとする。


「えー。副部長権限とか言われてもなぁ、たった二人の部活動だしなぁ、それなら私は部長権限使っちゃうもんねー」


助手、諦める。


「ふふふふ、言い合いで私に勝とうなど、100年早いのだよ。ワトソン君?」


//SE もぞもぞと身じろぎする音


スミレが更に深く助手に身体を寄せる。


「はぁぁぁ、やっぱりこのソファと助手の膝枕は最高のコンビネーションだね。ホームズとクレーパイプくらい相性抜群さ」


「いや、暑いとか言わないでよ。そんなこと言ったら私のほうが暑いんだから」


「そりゃだってさっき汗かくほど全力疾走して…はっ!?」


スミレが慌てて頭を上げる。


「ごめん、く、臭くなかった!?」


「ほんと?ほんとに臭くない?」


//SE スミレが自分の匂いを嗅ぐ音


「でも、自分じゃわからないし…え?君も汗かいてたの?なんでさ」


「あー、そういえば今日は5時間目が体育の日だったね。ちょっと嗅がせてよ」


スミレが首元に顔を寄せてくる。助手はまた立ち上がり、逃げようとする。


「こらっ、逃げるな!このホームズから逃げられると思うなよ!」


「とりゃあ!」


//SE 飛びつく音

スミレが助手の肩を両手で捕まえて胸元に顔を寄せる。

//SE スンスンと、身体の匂いを確かめるように嗅ぐ音


「うーむ、確かにいつもより汗の臭いが強い気がするな…やはり、真犯人は君だったんだね!ワトソン君ってわわわ、暴れるなってば」


//SE 助手が逃げ出そうと暴れる音


「だめだ、離さないぞ。離したら君は逃げ出すだろう!おとなしく、私の枕になるのだ!」


助手は取り乱しながら紅茶を入れるから放せと説得。


「え、紅茶いれてくれるの?やったー、おねがーい」


//SE 尻もちをつく音


引っ張り合っていたスミレが突然両手を離したせいで、助手が後ろに倒れる。


「あ、ごめん。つい手放しちゃった。君は大丈夫…みたいだね。よかった。頑丈なのも君の取柄だもんね」


助手は立ち上がり、スミレに飲みたい紅茶の種類を聞く。


「うーん、そうだなぁ、今日はレモンティーがいいなぁ」


「あっすっかり忘れていた!そういえばこないだの依頼人からお礼の品を受け取っていたんだった!紅茶にピッタリの品だぞ。彼女はセンスがいいな!」


//SE ゴソゴソとカバンの中を探る音


「じゃじゃーん!調理部の手作りミルククッキー!」


(だんだんと変化する心情を表すように抑揚をはっきり)

「そうそう、チョコクッキーも美味しいんだけど調理部はミルクが一番甘くて美味しいんだよね。うんうん。そうだね、お店なんか目じゃないさ。まぁ、そりゃぁ胃袋掴まれたら惚れちゃうかも…なんかそんなに絶賛するのは癪に触るな。没収だ」


「だって、これは私が貰ったものだから誰にあげるのも没収するのも僕次第だろう?」


「いや、まぁお茶請けは他にないけど…うーん。」


「あっ、じゃあ今度私が手作りクッキーを作ってきてあげるから、それで手を打つのはどうだろう」


「む、これでも私はお菓子作りは得意なんだぞ。名探偵だからな、一通りのことは何でも出来なくてどうする。完璧な変装のためには一般的なスキルを磨いておくことは重要なんだ」


(少し寂しそうな声で)

「ほら、ヴァレンタインもあげたじゃん。忘れちゃったの?」


助手がバームクーヘン、とボソッと口にする。


「えぇ、バームクーヘン?私、君にあげたのバームクーヘンじゃなくてマカロンなんだけど。私たち一緒にバームクーヘンなんか食べたことあったっけ?」


(できるだけ冷めた声で)

「ちょっと待って、誰の話をしているんだい」


(ぐいぐい問い詰める)

「ねぇ、君さぁ。ヴァレンタイン貰ったの私だけだって言ってたよね?あれ?どういうことかなぁ?ねぇ、どういうこと?クッキーって、なんのこと?」


「感激で言葉が出なかったんじゃなくて、嘘がバレないようにするために沈黙を貫いていたのかい?」


(怒りを込めて)

「ねぇ、ワトソン君?僕はそういうのすごく嫌いなんだけど」


「トリックも嘘もミステリーの醍醐味だけど!助手の裏切りは全然面白くないんだよ!ただただ辛くなるだけなんだよ!?」


スミレが気持ちが抑えられなくなり、取り乱す。

「うわぁぁぁ、私の助手が浮気したあああ」


//SE スミレが助手の身体を揺さぶる音

「ねぇ、なんとか言ったらどうなんだい?ねぇってば」


助手はバツが悪そうに沈黙。


「ふぅん、言わないんだぁ。なんだかさぁ、いつも一緒にいてくれるけどさぁ。ワトソン君ってなーんかいつも意味ありげな雰囲気だしてるよねぇ」


(少し誤魔化しながら)

「そこがミステリアスでみりょ…生意気なんだけど。君、ずっと私に隠し事してるでしょ」


「よし、決めた。今日の活動内容」


//SE パイプ椅子を引き出す音

「ちょっとそこのパイプ椅子に座って。いいから。ほら」


助手はスミレの勢いに気圧されて言われるがままに着席。


(脅すように)

「はい、手を後ろに組んで。目を閉じなさい。こら、暴れない。容疑者はこれ以上不利になることしないほうが良いと思うけどなぁ」


(耳元に近づいて、さっきまでと逆に優しく囁いて)

「近いとはずかしいってば。少しだけ、目、閉じてて」

//SE 縄を体に巻く音


スミレは座った助手の身体に縄を回しており、助手に様々な角度から話しかける。


「そのまま動かないでぇ…こら、手に力を入れないの。うだうだうるさい!痛くはしないから!」


「えっと、こうしてこうして…はい、出来た」


スミレが助手の正面に立ち、少し硬い口調で語りかける。


「ワトソン君、君には虚偽、浮気、隠蔽の容疑がかかっています」


「今日の探偵部の活動は、副部長であるワトソン君の取り調べです」


(尋問という単語を強調してゆっくりと)

「えぇ?縛る必要?あるに決まってるでしょ。……だって、今から尋問するんだから」


*以降、ホームズモードに切り替えて一人称をに変更

(以降、恐怖心と癒しの緩急を強調して)


(少し優しくする)

「大丈夫、拷問じゃないからね。痛いことは絶対にしない。まぁ、ちょーっとだけ怖い思いはしてもらうけど」


(狂喜をのぞかせて)

「ふふ、なんだか変な気分になるねこれ。悪いことをしたのは君で、僕は正義を掲げているのにとんでもない背徳感を感じているよ」


(後半になるにつれて悲しげに、力なく)

「それもこれも、君が悪いんだからね。僕に隠し事して、嘘ついて、浮気して…ねぇ、ほんとになんでこんなことになったんだろうね」


(少しだけ涙声で)

「うわ、なんかやばい、ちょっと泣きそう」


助手がスミレを心配して顔を顰める。


「うるさい!そんな困った表情をするな!なんで君が心配するんだ、君が悪いんだからな!?」


(少し憤慨した声で、切り替えて)

「もぅ、目線だけで僕を惑わすなんてほんとにとんでもない詐欺師だよ君は」


//SE スミレが制服のリボンを外す音


助手はスミレが服を脱いでいると勘違いして慌てる。


(意地悪に、煽るように)

「なにをビックリしているんだい?ただ僕はリボンを外しただけだよ」


「浮気者で詐欺師で狼藉者な君の目は傾国の美女もかくやというほどの魔力を持っているから、今日は封じさせてもらうよ」


(助手の顔の近くで、あえて優しい口調で)

「ほら、動かないで。少しでも動いてセクハラしたらリボンの位置を下げて喉を優しく縛り上げてあげるんだからね」

//SE リボンで目隠しをする音


(普通の雑談から、慌ててツッコミ)

「どう?制服のリボンに触ることなんてそうそうないでしょ?スベスベで肌触りいいよね。え、いい匂い!?………変態!!」

//SE 頭を軽くたたく音


(少し照れを含んだ呆れた声で)

「この、全く油断も隙もあったもんじゃないよ、全く。こんな姿だというのにさ…」


(少しハイになって笑い、冷静になって少し恥ずかしがって)

「…ふふ、ふふふふ。あはは、ねぇ今の君すごく。なんか、わぁ。あれ?めっちゃえっちかも…やばぁ」


(気を取り直して)

「ごっほん、いやなんでもない。それでは取り調べ、元い尋問を始めようじゃないか」


(すこし嫉妬心を覗かせて)

「ぜーーーったい、全部吐かせるから。君は私のだもん。もう一度身体に覚え込ませてあげる」


(賢そうに)

「さぁ、僕達のミステリーの開幕だ」


(以下、ナレーションや報告書を読むように)

「容疑者 ジョン・H・ワトソン 君は探偵部の副部長という立場でありながら、誰よりも大切にして、守らなくてはいけない部長の僕に対して多くの罪を犯した疑いがある」


「容疑は3つ。

―1つ目、虚偽罪

 君は二月十四日、ヴァレンタインの日、僕からマカロンを受け取った際、以下のように供述した。『俺、部長のマカロン以外ヴァレンタインで受け取ってないですから』。しかし、君は先ほどヴァレンタインの話題において、あろうことかバームクーヘンという全く別のお菓子の名を口にした。これはヴァレンタインでマカロン以外のお菓子を受け取り、それを僕に他のお菓子は貰っていないと嘘をついていたことの証明ではないだろうか


―2つ目、浮気罪

 前述の内容に沿うと、君は僕以外の女の子からお菓子を受け取っている疑いがある。ヴァレンタインで異性にお菓子を渡すという行為には様々な意味があるが、お菓子を受け取ったことを意図的に黙秘していること、また渡してくれた女の子に君からしか受け取っていないと嘘をつくのは明確に僕を騙そうという悪意を感じる。これは明確な浮気である。


―3つ目、隠蔽罪

 今回のことに代表するように、君はよく自分自身の話になると、のらりくらりはぐらかすことが多い。僕は君のことを知りたいといつも言っているのにも関わらずだ君がとても思慮深い人間であること、及び聞き上手であることは分かっているが、自分の意見を全然言ってくれないことは不信感に繋がってしまう。これは今まで流していた問題であるが最も大きな問題である。私はもっと、君の正直な気持を知りたいの!


この3つの容疑を晴らすことが出来れば、君は解放されいつもの帰路に着くことができるだろう。しかし、もしそれが出来なかった場合、君は二度と浮気できない身体に改造されることを覚悟すること」


(挑戦的に、妖しく)

「最終下校まで時間はたっぷりある。じっくり探っていこうじゃないか。ワトソン君?」

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