第4話 小さな女の子

 これも私が大学生の時のお話です。第三話の首の痕と同じ状況で部室にて昼寝をしていた時でした。


 部室は大学会館と呼ばれる古い建物の中にありました。昔、何かに使われていたのでしょうが、今は部活動を行うだけの建物となっています。

 茶道部の部室の上には体育館があってバレー部やバトミントン部が放課後に活動を行います。


 私が会館にある部室に入るには、正門に駐在している警備員さんから部室の鍵を預かる必要があります。預かる際には学部・学年・名前を紙に記入し、学生証を警備員さんに提示してから渡してもらえます。ですので、鍵を持って帰ったり紛失したりするとすぐに分かります。


 私は金曜日に会館を使用する部活動の中で、一番乗りで鍵を貰いにいくのです。名前を書く紙には私の名前しかなくて、今日も暇だなぁ寝るかなぁと思いながら部室へと向かいました。


 いつもと同じように部室でお昼ご飯を食べ、暇になったら昼寝をする。その日の昼寝というのは、ほとんど目を閉じているだけの状態でした。眠りが昔から浅い私は眠れる時と眠れない時の差が激しく、ぐっすり眠れる時もあれば、目を閉じているだけの時もあります。


 目を閉じながら外から聞こえる車の音や人の声などを聞いていると、ふと和室が騒がしくなっていたのに気づきました。

 バタバタと誰かが走る音と子どもの楽しそうな笑い声が聞こえてきます。私は、きっと運動部が上の体育館を使っているのだろう。その音が響いているのだと思い、あまり気にしませんでしたが、それにしても複数人が私の寝ている畳を走るような音なのでかなりうるさいのです。体育館で誰かがいるにしろ、ここまで響くものか? と怪訝に思いましたが、目を開けるのも面倒なので無視しようと決めました。


 畳で誰かがジャンプするような音が響くも無視。私の頭の近くを二人くらいの子が走っているような音がしても無視。……していたのですが、誰かにじっと見られているような感覚がし始めます。クスクスと女の子が忍び笑いする声も聞こえてきました。


 部員の誰かが来たのかなと思い、目を開けてみるとそこには、小学生くらいの女の子が立っていました。小学生の制服なのか、無地の紺色でひざ丈までのスカートに白い靴下。つま先はこちらに向いているので、女の子が私を見ているのだと気付きました。何か用かと思い、顔を見ようとしたところで女の子はすぐに消えてしまいました。


 女の子が消えてからは、和室で誰かが走るような音はしなくなりました。

 私は静かになった部屋で今度こそ寝ようと瞼を閉じました。


 帰り際に確認したところ、私が女の子を見た日は運動部は誰も来ていませんでした。鍵はずっと警備員さんが持っていたそうです。

 ちなみに、大学会館と呼ばれる建物は最近新しく立て直されたそうですよ。どうせなら、私が在学中に立て直してもらって綺麗なお部屋で寝たかったものですが(笑)

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平成怪奇譚 十井 風 @hahaha-

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