第3話 首の痕
これは私が大学四年生の時のお話です。
卒業間近だったので就職活動も終わり、必要な単元も取得し、特にやる事は無かったのですが、暇だし学費は払っているから授業を受けないと勿体ないと思い、金曜日の一限と二限に授業を入れていました。大学時代は茶道部に入っていて、金曜日が茶道部の活動日です。授業の入れ方が下手だったのですが、一・二限だけなので夕方の四時頃から始まる部活まで時間を潰す必要があったのです。一度、家に帰る時間も無かったので、私は部室でゴロゴロする事に決めました。
昼食を終えて時間が有り余っていたので、昼寝をする事にしました。
部室にはソファがあり、私は自分のマフラーを掛け布団代わりにして寝ます。
眠りに落ちてからどれくらい経った頃でしょうか。私は悪夢を見ていました。おぞましい妖怪に命を狙われ追いかけられる夢です。夢を見ていると夢の中の自分は気付いているのですが、どうしてかとても息が苦しかったのです。心臓がドッ、ドッ、ドッと鳴っているのが鼓膜まで届き、息が出来なくて意識が飛びそうになっていました。これはまずい、と思い覚醒しようとするのですが体が押さえつけられているように全く動きません。目も開けられず、金縛り状態だと焦りました。
でも、息は出来ないまま。このままだと死んでしまうかもしれない――。死亡場所が部室で、ゴロゴロ中の死亡とか絶対に嫌だ! と心の底から強く思いました。
勢いに任せて私は思い切り起き上がりました。やっと息が出来た、いきなり酸素を吸い込んだせいでむせてしまいました。まだ、心臓はドキドキしています。
私は何だったんだ、と酷い寝汗を拭きます。
ちら、とソファの近くにあった全身鏡に映る自分の姿が目に入りました。
何なんだ、これ……。
首には誰かに絞められたような赤い痕がくっきりと残っていたのです。思わず、私は自分で自分の首を絞めたのだろうかと思い、痕と手を合わせてみました。サイズが合いません。じゃあ、誰がつけたんだこの痕……。
分からなかったので私は二度寝をする事に決めました。今度はすやすや眠れました。
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