許嫁として
「こ、これが先輩のベット...」
「兄さんの匂いが...//」
「澪未矢さんのぬくもりが...//」
俺の部屋に入るや否や、三人はベットに飛び込んでいった。
「...これは俺の寝るスペース狭くなりそうだな」
俺のベットは四人ぐらいまでなら快適に寝れる。
ただ、五人となるとそうはいかないんだよな。
チラッと、芯珠の方を向く。
芯珠も俺のベットに飛び込みたいというような顔をしている。
...どうやら俺が我慢するしかなさそうだ。
電気を消し、全員でベットの上で寝転ぶと
「ちょっとなんで赤条寺さんが兄さんの隣なんですか!」
「芯珠さんもですわよ。使用人の分際でなぜわたくしの許嫁である澪未矢さんの隣に寝転んでいるのでしょうか」
まぁこうなることは大体予想できたが。
当然俺が真ん中で、その横にはそれぞれ紅愛と芯珠、そしてその二人の隣に神楽と栄那という構造になっている。
「うるさいですよ神楽さん。胸と同じぐらい器も小さいんですね」
「な!?ど、同学年の女子の中では大きい方です」
「神楽様、赤条寺様、ご静かに願います。澪未矢様がお眠りになれません」
「...まだわたくしとの話がついていないのですけれどね芯珠さん」
...頼むから寝かせてくれ。
そこから40分ぐらいくだらない言い争いが続いた。
何故か今日は眠りが浅く、途中で起きてしまった。
「...ん」
部屋の時計を見ると深夜の3時半だった。
ベットに目をやると、不機嫌そうに眠る神楽と、幸せそうに眠る紅愛と芯珠の姿があった。
栄那の方を見ると
「あら、澪未矢さんも起きてしまったのですね」
どうやら俺と同じく途中で起きてしまった栄那が体を起こしていた。
「どうでしょう澪未矢さん、ここは二人で部屋のベランダで夜空でも眺めませんか?」
夜空か。
正直エロゲだとオープンワールドゲームみたいに夜空とかきれいではなさそうだが、たまにはいいかもしれない。
ベランダには一つのテーブルと、二つの椅子があった。
二人で座り、夜空を眺める。
「...意外と美しいものではありませんね」
「同感だ」
やはりエロゲっぽい夜空だった。
所々星は見えるのだが、形が完全に崩壊している。
これなら部屋にいる方がマシだと思い、戻ろうとすると
「...澪未矢さん。雫さんが帰ってくるそうですわね」
唐突に栄那が秘密情報を口にした。
「どうして、それを...」
「当然、把握してますわよ。夜崎家と七桜家は深い関係なので」
確かにそれなら知ってても当然か。
「あまりそちらの家庭のことに口出しするのはいい気がしませんが」
心底嫌悪するような顔をして
「あのお方の澪未矢さんを下に見ている態度、気に入りませんわね」
はっきりと口にした。
栄那がこんな嫌悪感を示すということは、雫は心底俺を下に見てるんだな。
「澪未矢さん、もしあの方から逃げたいと思ったらいくらでもわたくしを頼ってくださいまし。わたくしは雫さんに後れを取るつもりはありません」
そう言ってくれるのはありがたいが、さすがに他のヒロインとの駆け落ちを助けてしてくれたりはしないだろう。
栄那と駆け落ちすることも、別に雫から逃げる必要がないしな。
いや、もし雫がいきなり栄那との婚約を白紙にしたら、もしかしたら駆け落ちENDもあり得るのか。
とにかく栄那がとても頼りになることは分かった。
「まぁ安心してくれ、俺も母親にはもう慣れた」
「そうだといいのですけれど」
当然嘘。
まだ顔を見たこともない。
「なぁ、神楽は雫のことをどう思っているんだ?」
さっき芯珠から聞かされたが、いちおう栄那からの視点も聞いておこう。
「そうですわね...いつ背後から刺してもおかしくないかと」
「......」
多分冗談ではないだろう。
いざとなったら芯珠が泊めてくれると思うが、俺も準備しておく必要があるな。
「さて、そろそろこの汚い夜空を眺めているのも気分が悪くなってきたので部屋の中に戻りましょうか」
「それもそうだな」
部屋に戻ると、また紅愛と芯珠の間に寝転ぶ。
「......」
栄那が睨んできたが、今日ばかりは許してほしい。
許嫁がいるのに他のヒロインにNTRれるエロゲのクズ主人公に転生した話 ~NTRれずに各ヒロインを攻略しようとするもほとんどが激重系ヒロインだった件について~ 北宮冬馬 @kitamiyatoma
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