嫌な報告
「皆様、澪未矢様がお風呂からお上がりになりました」
遊び部屋でゲームをしている四人組に芯珠が声を掛ける。
文化祭が終わった後、俺たちだけの後夜祭として、俺の屋敷で寝泊まりすることになっていた。
それに加え、全員で添い寝することも。
「じゃ私たちも風呂に入ってきましょうか」
紅愛の声で芯珠以外の女性陣達が浴場へ向かっていく。
「ええと」
残された俺と芯珠でいったい何をすればいいのやら。
「「......」」
二人して沈黙する。
「澪未矢様」
不意に芯珠が声を出す。
ただ、その声はどこか言うことをためらっている重々しい口調だった。
「どうした?」
「...ついさっき、私のところに連絡が来られまして」
「連絡?なんの?」
「近々雫様がお帰りになられるそうです」
雫っていうことは澪未矢のお母さんか。
とうとうお母さんとご対面ってわけか。
俺は一度も雫の姿を見たことがない。
屋敷のどこかに普通は写真があるはずだが、おそらく神楽が雫に対して強い嫌悪感を抱いているから写真さえも置かないようにしてるんだな。
「近々というのは具体的には...?」
「それはお答えいただけませんでした。ただ、私の予想だと雫様は抜き打ちチェックのようなものをするおつもりなのかと」
それはだいぶ厄介だな。
話を聞くと、どうやら雫はかなり厳格な性格をしてそうだ。
俺の自堕落な生活を見られたらただでは済まない気がする。
「澪未矢様にとって雫様の存在は到底喜べることではないというのは重々承知しております」
まぁ澪未矢にとってはそうだろうな。
なんたってもう不良品として見られてるんだから。
「ですが私は澪未矢様の味方あということをお忘れなく」
驚いたな。
確か芯珠は雫に忠誠を誓っていると言ってなかったっけ?
忠誠を誓っている相手より俺を選んでくれるのか。
ちょっと照れるな//
芯珠の顔を見ると、まぶしいほどイケメンだった。
「...やっぱり俺芯珠さんと駆け落ちしたいかも」
「澪未矢様、何かおっしゃいましたか?」
「い、いや何でもないよ」
それにしても夜崎雫か...
これはちょっと厄介な存在だな。
「ちなみにこのことは神楽にはもう」
「いえ、神楽様にはまだお伝えしておりません。それに...」
「それに?」
「神楽様は澪未矢様以上に雫様に敵意を抱いております。もし今この場でそのことをお伝えしたら...」
何となく想像できる。
「ですから澪未矢様からは神楽様に伝えるのも御控えいただけると」
多分俺に伝えることさえためらっていたのだ。
ということは神楽はよっぽど雫に対して嫌悪感を抱いているということだ。
ここら辺の人間関係の影響で何故か主人公に飛び火してきて無理やりBADENDになるというエロゲーはよくある。
このエロゲはそういうストーリー展開になっていないことを願うが。
「分かった。神楽には俺からは何も言わない」
「大変ありがとうございます」
つまりこれで神楽は完全な不意打ちを食らうことになる。
だが、それでいい。
神楽がそれこそ雫が返ってこられないように手を回したりしたら、シリアス展開になってなんやかんやあってBADENDになる確率が高い。
だが、さすがに雫がこの屋敷に帰ってきたら、そこから何か妨害工作を行うことはでいないだろう。
「では澪未矢様、皆様がお上がりになられるまでの間少しゲームの特訓を行いましょう」
「え?」
ゲームの特訓?
まさか芯珠がそんなことを言い出すとは。
「私が使えているご主人様が、自身の妹様や少し品性にかけておらっしゃる生徒会長様や煽り大好き許嫁様に敗北する姿はあまり好ましいことではありません」
「芯珠...」
まさかこれも俺を思っての行動だったのか。
...意外と負けず嫌いだな。
「さぁ、まずはこのFPSで私とタイマン勝負しますよ」
...正直いじめになる予感しかしない。
ていうかいつものメンツの中で一番芯珠がゲームが上手い。
あ、でもまだやったことないけど釖竜さんももしかしたら
「...澪未矢様、今何か私のご機嫌をとても害すようなことをお考えになられませんでしたか?」
「い、いや...そんなことはないです...」
釖竜さんのことになったらいきなり不機嫌になるんだよな。
それから俺は不機嫌モードの芯珠にボコボコにされたのであった。
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