SF初心者にもオススメしたい一作
- ★★★ Excellent!!!
「理想の世界が画面に映し出されて、取り込まれたら出て来られない」
設定の独自性、込められたメッセージ性とは対照的に、文体はあくまで淡々と、奇をてらったところがなく、読みやすい。
この飾り気のない真面目な語り口は、そのまま主人公のキャラクター性と重なってくる。
家族を含め、誰もいなくなってしまった世界にあってもなお、絶望に呑まれることなく、物語を共に歩むことができる。
それでも、寂しさは次第に膨らんでいって──主人公は空っぽの家に鍵をかけて、旅に出る。
旅立ちに必然を感じられる物語は、読んでいて心地が良い。普段はSFを読まない方にもオススメの一作。