第12話
「だって、きいてくれよエリーシア。あいつ、とんでもない無能の性悪女だったんだぞ?あんなやつが王妃になんてなったら、この国は崩壊するにきまってる!!」
「でも、聖女なのでしょう?なら、習わしに従って結婚すべきでは…」
せっかくこのクズから逃げ出せたのに、また戻るなんてごめんですわ!!てか、貴方が運命だのなんだのほざいたのでしょう!?ですよね!?
本当今更何を言ってらっしゃるのでしょう…
「うるさい!この俺が、お前を許してもう一度結婚してやると言ってるんだぞ!ありがたいとは思わないのか!?」
………………………
おっと危ない、あまりにも突拍子無さすぎて、倒れてしまうところでした。脱力魔法でも詠唱したのかしら?いえ、そんなはずないわね。コイツ魔法はてんでダメですもの。政務も魔法も決闘もダメでしたよね…。
あれ、この人何ができるんでしたっけ。
ありがたいって思う要素ありますかね…………?
ありがたい…ありがたい…ねぇ…。うーん…。
「いえ、これっぽっちも」
私は最高の笑顔で、彼の戯言に答えた。ちょっと満面の笑みすぎたかしら。
「なっ…俺は王子だぞ!?その俺になんて口の利き方だ!」
王子だから誰よりも偉いと思っているのかしら。だとしたら、この国は終わりね。独裁を歩む国が辿る終着点は、破滅以外ありませんもの。
「そういうところですよ?私があなたをこんなにも嫌った要因は。」
「はぁ?俺を嫌う奴がこの世のどこにいるというんだ?俺は王子だぞ?」
…王子だぞ?だからなんですの?誰からも嫌われないと?肩書だけでなんと幸せな方なのでしょう。
「さっきから王子王子うっさいわね。そういう偉そうで、傲慢で、わがままで、無駄に上から目線なのがうざいって言ってんのよ!その小さな脳みそでも理解できるように話したつもりだったのだけれどもねぇ!?」
私は、本当に、久しぶりに、いら立っていた。
変わっていなかった、いや、変わろうとしていなかった彼に。
離れてもなお、私に迷惑をかけてくる異母妹に。
なにより、こんなやつに今まで愛情なんてものを期待していた自分に。
「本当に、馬鹿みたい…」
「な、何を言っている!王子だぞ!!不敬罪で逮捕だぞ!!」
苛立ったように顔を歪めたタミナ。地団駄まで踏んで、これでは本当に馬鹿ですわ。正真正銘のただの馬鹿。ここまで来るともうなんか感慨も消え失せますわ。
「はあぁぁぁぁ…………。」
大きく息を吐いて、私は言葉を紡ぐ。
「あのねぇ!?不敬罪っていうのは敬うべき方に使う罪ですのよ!?貴方に敬う要素は残っていらっしゃる!?私からしたらこれっぽちも残ってませんわ!!!!」
決め手の一言
「お引き取り願いますわ!!!!願わくば、永遠に!!!」
…ほんっと、なんなんですのコイツ!!!
追放された聖女は、田舎でスローライフを満喫する。 【PV6000ありがとう】 風花こおり @kori40kazahana
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