第11話

闇夜に浮かぶ満月。そっと指輪を空にかざす。すると、指輪が青く光りだし、一筋の光が闇に放たれる。ルビーのはずの指輪は、この瞬間だけ青色に輝く。

「どーなってんだろ、これ。」

完成したばかりの家のベランダで、ふと呟く。幼いころから、眠れない夜に何度かやっていたが、いまだ仕組みや効果はわかっていない。

「まあ、いっか!」

ま、わかんないままでよし。今日だって眠れないだけだったし。満月の日って寝つき悪いのよね~。

「…ぁ。」

…え、なんかうめき声みたいなの聞こえなかった?

「…まぁ。」

怖い怖い

「…さまぁ。」

なになになになになになに

「エリーシア様ぁ。」

「ひぎゃぁ!!!???」

え、なになになになになになに!?!?!?とうとう呪われた!?なんかに憑かれた!?

「エリーシア様、落ち着いてください。バルです。狼の、バルです。」

「…なぁんだ、バルかぁ…って、どうしてここに?」

「いえ、なんだか胸騒ぎがしまして。…って、エ、エリーシア様、その指輪はっ!?」

「え、これ?ミーラ使役する用の指輪だよ?今はほとんどみんな村にいるから、だれも入ってないと思うけど…てか、この前見たよね?」

「いえ、あのときはルビーの指輪でいらっしゃいました。」

「あー、これそれといっしょ。なーんか青くなるんだよねー。」

「…まさか、ご存じない?」

そういって、バルが説明してくれた内容を要約するとこうだった。

1、この指輪は「聖獣主の証」と言う

2、聖獣主の証は、持ち主が聖獣を使役できるようになる

3、聖獣主の証は、代々聖獣守の一族が受け継いでいた。


「…それで、なんでミーラの指輪と一体化して、しかも満月の夜だけ変わるようになっているのかしら…?」

「それは私にもさっぱりですが…。」

(ふぉっふぉっふぉ、そんなに気になるのかね。)

「「カ、カレイド様!?」」

(二つだったはずの指輪がひとつになった理由を知りたいのであろう?)

「は、はい。教えていただけるのなら…。」

(では、次の満月に、指輪を持って森の泉においで。私が呼んだのだから、迷わずに来れるであろう。)

そう言ってカレイド様は、私たちの頭から姿を消した。


次の満月…だいたい一か月後くらいね。数えなくても勝手に指輪がむずむずし始めるし、気長に待とうかしら。


翌日、いつも通り起きて、いつも通り顔を洗い、いつも通り着替えて、いつも通り外に出ると…

「…え?」

なんで、なんで?

「なんで、ここに(あの浮気性ゴミカス)王子がいるのぉぉぉぉぉぉ!?」

目の前にいる、ドヤ顔のイケメン。(なお、私の好みではない。)こいつは紛れもなく、アルネッタ王国唯一の王子、タミナ・アルネッタだ。…もう一度言うけど、好みでも何でもないし、なんならとっとと目の前から消えてほしいから!これは…ワンチャン復縁(´▽`)とか思わないで!思ってないだろうけど!

「ああ…エリーシア。こんなに痩せて…僕の元を離れてさぞ辛かったろう。今なら出ていったことを許してあげる。戻っておいで。」

なにやら馬鹿みたいに間抜けな顔で間抜けなことを言っている。

痩せた?ストレスから解放されて、ちょっと太ったの気にしてたんですけど?辛い?いえ、心も体も元気いっぱい、なんならあの頃より調子いいですけど?

そして一番間抜けで頭おかしいのは…

「戻るも何も…あなたが婚約破棄して、出ていくよう言ったのではないですか。」

「ごめんよエリー。あの時は僕は気が狂っていたんだ。何年も連れ添った婚約者を捨てて、妹と婚約だなんて…今考えると吐き気がする!ほんとうにごめんよエリー。どうか許してくれ。」

…はあ。こいつ、何言ってるのかしら?

“あの時は”気が狂ってた?お前の気が狂ってんのは元からだろ?自分の仕事もしない。町娘にすぐ告白する。受け入れられたら調子に乗って「側室にしてやる。」それで拒否されたら癇癪を起こす。振られたら私に延々愚痴。いやさ、自分の婚約者が出会って5秒で告白して振られた話とか、どんな顔して聞けばいいの?逆に教えて?

次、何年も“連れ添った”。いや、連れ添ってねえし。お前が一方的に肩を預けてただけだわ。こちとら責任ごとお前を支えて潰れかけてたわ。そのくせ労りもしないし。少しくらい私の頑張り認めたって良くない?「今日こんなことが~」とか言ったら静かにしろだのこっちも疲れてるだの僕を労われだの…。お前がした仕事なんぞ私の1時間分だわ。それで労われとかよく言えたな。ほんと脳みそが赤子から進化してない。だいたいこいつは…。

(すとーーっぷエリーシア!!長い長い!落ち着いて!愚痴なら後でいくらでも聞くから、今はこいつどーにかしないと!)

確かに、それもそうね。あー、久しぶりに不満が爆発したわ。でもなんかすっきりしたわぁー。さて、今はこいつの対処ね。

「タミナ殿下、ミナーシャはどうしたのですか?」

「あー…あいつは、ちょっとな。」

…これは何か裏がありそうね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

追放された聖女は、田舎でスローライフを満喫する。 【PV3000ありがとう】 風花こおり @kori40kazahana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ