第2話 亜人店主の悩み事
ベルクは、グリフォンを買い取ってもらうため、レナとギルドに来ていた。
「すまない、これ買い取ってくれるか?」
ヴァレリアと一緒に倒した5匹のグリフォンの素材を出した。
「すみません、あなた最近冒険者になったばかりですよね?それでこれほどのモンスターを......」
「ギルドマスターのヴァレリアに手伝ってもらったんだ」
「本当ですか?失礼かもしれませんが、これらは盗品の類ではありませんよね?」
「そんなことはないよ。そんなに疑うならヴァレリアに確認してみてくれ」
ギルド職員は、魔道具を使いヴァレリアに確認を取る。するとギルド職員の顔がみるみる青くなっていく。
「大変申し訳ございません。本当にギルドマスターとグリフォンを狩られてたんですね」
何度も頭を下げるギルド職員をなだめ、グリフォンを買い取ってもらった。予想外にも、金貨2枚ほどになった。
「じゃあまずご飯でも食べるか」
いつのまにか傾き始めた日を見て、レナにそうつぶやく。
辺りをキョロキョロと見回すと、【狼の大皿】と言う看板を掲げた一つの店が目に入る。
「いらっしゃい」
狼の亜人だろうか。体格のいい店の店主が大きな声で接客してくれる。年季の入った店内は、どこか落ち着く。
手渡されたメニューを見ると、ワイバーンの尾のステーキが目に止まった。
ワイバーンってあのドラゴンのだろ?
かなり腕利のやつじゃないと倒せないから、一般人には手の届かない高級食材。
メニューの端を見ると銀貨80枚と買いてある。
ちょっと良い牛のステーキと同じくらいの値段じゃないか。
「店主、この値段間違ってないか?」
ワイバーンの尾のステーキを指差しながらそう告げる。
「間違っちゃいないさ、俺の知り合いが腕利きの冒険者でよ、ワイバーンの尾を安く譲ってくれるのさ」
「まじか、じゃあこれをくれ」
「すまない、近頃流行ってる冒険者狩りってのがあるだろ?それに知り合いの冒険者が襲われちまって、肉が買えなくなっちまったんだ」
「冒険者狩り?」
聞いたことのない単語に首を傾げる。
「お前さんここら辺の人じゃないのか。冒険者狩りっていうのはな、冒険者を殺して、魔物の素材や金品を奪っちまう盗賊のことさ」
「その冒険者死んだのか」
「いや、だがだいぶ怪我しちまって、冒険者狩りが捕まるまではしばらく休養を取るらしいんだ」
「じゃあ俺がそいつを捕まえれば、ステーキが食べられるってことだな」
「まぁ......そうなるが」
「任せとけ!俺にはツテがあるからな」
俺はスパゲティをレナはオムライスで腹を満たす。ワイバーンを食べられなかったのは惜しかったが、満足のいく味の料理に2人とも満たされた。店主にお代を渡し、美味しかった旨を伝え店を出る。
「帰ろうか」
すっかり暗くなった都に、佇む街灯に照らされた2人の影は仲良く手を繋いでいた。
***
次の日の朝。
眠い目を擦りながら、レナは早足のベルクの後をついていく。
「早くいくぞ、ワイバーンが待ってるんだ」
ベルクは朝からずっとこの調子で、ワイバーン、ワイバーン、と呟いている。
「ねぇもう少しゆっくり歩いてよー」
「やだよ」
「こんなにあさ早くに行かなくてもいいじゃん」
「そんなに言うなら宿で寝てたらいいだろ」
「レナ1人はいや」
レナは不機嫌そうに呟く。
そんなレナを気にせずにベルクは、早歩きを止めない。
レナはため息を吐きつつもベルクに置いて行かれないよう足を早める。
そんなやりとりをしているうちに目的についた。
ベルクはギルドの扉に手をつき力を込めて開ける。
あくびをする少し気怠そうな受け付けのお姉さんの前に、真反対の様子のベルクが小走りでカウンターに駆け寄った。
「ギルドマスターのヴァレリアに会いに来た!」
「落ち着いてください。お名前は?」
ベルクの元気に少し引き気味のお姉さんはそう返す。
「ベルクです」
「今ヴァレリア様はクエストにて出払っておりますので、ギルドマスターの部屋にてお待ちください」
そう言われ一際大きな部屋へと通される。両端に並べられた本棚には、難しげな背表紙の本が所狭しと並ぶ。その部屋の中央に置かれた来客用ソファは座り心地が良く、俺でも高級なことがわかった。
「わぁ、本がいっぱい!」
レナは子供っぽい笑みを浮かべ本を手に取る。
「おいおい勝手に触っちゃダメだよ」
レナを隣に座らせなだめていると、扉が開き、 ヴァレリアが入ってきた。
「冒険者狩りの情報がないか聞きに来たんだ」
「君は数日前に帝都に来た人間だ。ある程度は信用できる、それにご飯も食べさせてくれたしな。だが、冒険者狩りのことは一部しか話せない。念には念を入れないといけないからな」
難しい顔をした後こう告げる。
「絶対捕まえなきゃいけないんだ」
ヴァレリアに真剣な眼差しを向ける。
うーんと、悩むヴァレリアをよそに、急ぎ足の足音が部屋に近づいてくる。
勢いよく開かれた扉から、ギルド職員が飛び込んできた。
「すみません、囮役の冒険者と連絡が取れません」
焦る様子でそう告げるギルド職員。
「今日のために1ヶ月も準備したんだぞ......」
悩んだヴァレリアの顔がこちらを向く。
「ベルク、危険な役回りだが冒険者狩りを捕まえられる任務、やるか?」
囮役って聞こえたよな......。
でもワイバーンを食べられるなら迷いはない!
「もちろんやるさ!」
「では、夕方頃にまたここに来てくれ」
「わかった」
そう告げ部屋を出る。
「レナもいっしょに行くー」
「だめだよ、危険なんだから」
「じゃあルナもまほう使えたら行ってもいい?」
「使えたらな」
手を前にかざし、歯を食いしばって変な顔をしているレナを見ながら言う。
「どうせなら魔力測ってみるか?」
ギルドの魔法を測定する水晶の前に連れて行く。
「ほら、ここに手をかざして」
言われた通りに手をかざすレナは、変に力を入れているのか、肩をプルプル振るわせている。
「そんなことしても変わんないよ」
笑いながらそう言っても、レナは真剣な顔をしてそれをやめない。
そうこうしているうちに、水晶が光だす。
「わぁ、きれい」
水晶に魔力の量と属性が浮かびだす。
【魔力量】
120
【属性】
水
「ねぇ、これってどのくらいつよいのー?」
「え......」
しばらくの沈黙が続く。
おいおいおい、俺の魔力量130だぞ......。
亜人の子供ってこんなもんなのか?
「俺と同じくらいだ......」
「ほんとに?やった!」
飛び跳ねるレナの横で、ベルクは項垂れる。
「じゃあいっしょに連れてってくれる?」
「魔法が使えるようになったらって言ったろ」
「どうやったらまほう使えるー?」
「うーん、魔法は使う人によって全く違うし、同じ属性でも同じ魔法を持つ人は1人もいないんだよ。だから魔法を使う感覚は人それぞれで全然違うからなんとも言えないんだよな」
「まほうって同じのがないんだね」
「そうだ。そして生涯で使えるようになる魔法は最大3つから5つだ。それ以上使えるやつはほとんどいない」
ちなみに俺はもう4つ使えるぞと、言うがルナの耳には全く届かず、唸り声を出しながら顔をしかめ、魔法を出すことに集中している。
「1日で使えるわけないだろ」
笑いながらそう言い、レナを連れギルドを後にする。
***
「あっという間に夕方になったな」
ぐずるレナを宿屋に置き、ベルクはギルドの前に立っていた。
「なあ、あんたがベルクか?」
男がタバコをふかしながら話しかけてくる。
その気怠そうな声と無精髭は、その男の性格を表していた。
「そうだが......あんた誰だ?」
「俺はオスカルだ。一応先輩なんだから敬語つけろよなー」
「それで俺は何をすればいいんだ」
「無視かよー、俺悲しいわー。まあ今日は簡単に言えば囮になってもらう」
オスカルはおちゃらけた感じで詳細を話し始める。
「具体的に言うとな――」
元猫耳奴隷少女と巻き込まれ体質おじさんは異世界グルメを求めてる! みかん太郎 @mikantarou03010911
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