第30話 狐との交渉2
関税の撤廃、この男は最初からそれが目的だったのか。
寒気がしてきた。
目の前にいる狐顔の男、ラースは口元を少し明けで嘲笑するかのように笑っていた。
「関税の撤廃はこちらとしても厳しく、緩和でどうでしょうか?」
さすがに撤廃は商業が軌道に載ってき始めたのにやってしまっては、苦労が水の泡だ。
ここは撤廃じゃなく緩和路線で交渉を収めたい。
そんな考えを知ってか知らずかラースは、さらに追い打ちをかけてきた。
「では、緩和路線でもよろしいですが、私は連邦国から全権委任でこちらに来ております。軍船の値段を少しあげようかと思うのですが。」
「それは横暴な!」
後ろで控えている騎士がラースの言葉に反応した。
確かに横暴ではあるが、こちらにそれを止めるカードはない。
「無礼申し訳ない。後で行って聞かせますので。」
「ええ、もちろん。さすがに突然の話ですからな。少々時間が要しましょうな。また後日話し合いましょう。まぁなんでしたら、港の権利でも下されば、領内の軍備全てこちらで揃えますよ。」
ラースのその一言で今日の交渉は打ち切られ、後日持ち越しとなった。
―――――――
「横暴すぎます!ご当主さま、何故あんなのと取引をしたのですか!」
ラース達が部屋を出ていくと、先程騒いでいた騎士がそんなことを言ってきた。
「すまない、だが連邦と交渉するしかないんだ。他大陸では遠すぎる、帝国、皇国では軋轢を生じさせる。だから連邦しか取引できないんだ。」
そうなんだ。
同盟と言っても一枚岩では無い。
皇国派と帝国派、そして同盟派の3派閥がある。
今は大事な時なのだ。
どちらかで船を取引すれば、派閥間の争うに巻き込まれ、いえを危険に晒すことになってしまう。
騎士もそれを理解しているのであろう。
悔しそうな顔をして、俯いている。
「申し訳ございませんでした。ご当主様。」
「いいんだ。君たち騎士がこのフェルナン子爵領のことを一番に考えていることを俺は知っているから。」
そうだ。騎士たちはこの子爵領のことを大切に思ってくれている。
その上での讒言なんだ。
だからこそ俺は騎士たちの期待に応えよう。
「今から連邦国への対応をまとめたい。アルバとニーチェを呼んでくれ。」
アルバは仕えてからずっと港の利益を見てきた男だ、ニーチェは、ジルベルトから注意するように言われたが、商人上がりの者だ。
商売に関しては信用できるだろう。
それにまだニーチェはこちらに暫くは仕えている気がする。
それなのにフェルナン子爵家に連邦国を入れるわけが無いからな。
そう思い、騎士に2人をすぐに呼ぶように命じた。
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俺が国を統一する迄の物語。〜フェルナン子爵家統一記〜 快快 @pnku
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