第29話 狐との交渉1
――2週間後
あれから俺は毎日の執務をこなしたあと、暇時間が出来れば城壁の作業を手伝い、アズールの所へ行き海軍の訓練を見ていた。
そしてついに連邦国から軍船が納品された。
聞くところによると連邦国では、最近フリゲート船という船が出来たらしく、その船と旧式の船を総入れ替えするので安く譲って貰えた。
大半の船は帝国が買ったらしいが、うちは今後の港の仕様優先権を条件に帝国よりも安く買い付けた。
「ガゥエル様、本日港に船が来ます。今回は3隻ほど納品されますが、残りはまた後ほどに。」
そうなのである。
フェルナン子爵家では今回10隻の船を買った。
タイプは旧式と呼ばれるガレオン船。
それでも他家から見ればかなり新しい船だ。
それを10隻買ったがなんせ港に止める場所がないため、連邦国で一時的に預かってもらっている状態だ。
「ああ、港の拡張しだい随時に船をこちらに持ってこよう。」
「えぇ、そうですね。」
騎士のものとそんな話をしていると、部屋がノックされアルバが入ってきた。
「ガウェル様、連邦国の使者がご到着致しました。」
「わかった、すぐに行く。」
どうや連邦国の使者が来たらしい。
今回、俺は連邦国で船を買うにあたって連邦国の軍部との繋ぎを作ることにした。
これは後々に生かされるだろうと信じての行動だ。
「よし、行くか。君も着いてこい。」
そう騎士にいい使者が待つ部屋に移動を始めた。
―――
「失礼する。」
そう言い部屋に入ると軍人のような男と文官のような男の2人が椅子に座っていた。
「申し訳ない、少し遅れってしまったようだ。」
「いえいえ、とんでもございません。フェルナン子爵様はうちの大客ですのでなんとも。」
そういう文官の男は金髪に狐目をした言ってはなんだが胡散臭い顔付きただ。
「おっと、紹介が遅れておりました。私は連邦国商業担当の二等文官のラースと申します。こちらの無口なものは連邦軍の大尉、グラッハ大尉です。今回私の護衛として参加しております。」
「…よろしく頼む。」
そう言われ紹介されたグラッハ大尉は白髪混じりの黒髪に顔は傷が沢山あり眼帯をしている。
前線で生きてきた男とよく分かる。
「さて、ラース殿。今回は軍船の値段交渉と港の優先権に関しての取り決めで宜しいか?」
「ええ、それです。」
「わかった。早速だが軍船の値段だが相場は白金貨200~300と聞く。今回は港の優先権を条件に値引きなのでこちらは、白金貨約150としたい。」
「ふむ、確かにそれは妥当だと私も思います。ですが、港の条件次第によっての値引きですな。」
ラースはこちらの提示する金額には妥当だと判断するようだが、港の権利がどれほどのものなのかが気にあるようだ。
グラッハの方はこちらの交渉には我関せず、本当にただの護衛らしい。
「では、こちらが提示する権利は2つ、港に船を停める際の場所の優先的な確保、倉庫の使用料の半額でどうでしょうか?」
「ふむ、条件としては確かによいのでしょう。ですがこちらが提供する船はこちらだとまだ最新技術の塊のはず、もう少しいい条件をつけては?――例えば関税の撤廃とか。」
その一言を発した瞬間、ラースの纏う雰囲気が突如として変わった。
言うのであればまるで獣が餌を狙うような感じだ。
――狐がっ…。
俺はそう思った。
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