苦くて切ない君の匂いがした

希望を感じる読後感。
キャラ立ても設定も、構成も描写の書き方も上手い。
書き出しが、動きのある場面からはじまっているところが良い。

「タバコの匂い」という書き方で話が進むので、具体的にどんな匂いなのかが気になると同時に、なぜ描写しないのだろうと思っていた。
最後に書かれているのを読んで、このためかと納得した。

主人公は、両親の愛情に飢えていたのだ。
共働きであまり顔を合わせないとはいえ、存命している。
母親のホッとした顔を見てから、甘えることができなくなったのだろう。
いまはもう高校生。
親に甘える年齢ではない。

親を思い出させるタバコの匂いをさせている遠田さん。
愛情に飢えていたのを思い出すと同時に、彼女へ惹かれたのかもしれない。

彼女の手を取る思い切った行動はよかった。
プロポーズじゃないと否定しつつも、告白していると同じ。
まだ内気な部分が残っているのが見え隠れしている。
初々しくていい。

思いっきり息を吸って、二人で笑いあう日々が訪れることを願う。