第5話 エピローグ

 絲綢之路を西域へ向かった瓊華がどうなったか、知る者はいない。ただ歴史の事実として、繁栄を誇った唐は斜陽の時を迎え、サラセン軍は勢いを増して領土を広げていった。その勢いは高仙芝将軍でさえ食い止められなかった。

 楊玉環は長じて後に玄宗の寵愛を得て、楊貴妃という名の絶世の美女として宮廷に花を添えた。ただし唐を衰退へと導いた傾国の美女としても歴史に名を残した。

 真成は志半ばにして開元二二年に三六歳の若さで亡くなった。次の遣唐使が長安に到着して合流を果たしていたので、もう少しで日本に帰れるはずだった。恋い焦がれた故郷への帰還を果たせずに倒れた真成の無念はいかばかりであっただろうか。

 井真成、亡骸は既に異国の土に埋葬されてしまったけれども、魂は絲綢之路を東進し故郷の日本に帰ることをこいねがってやまない。








参考文献


唐詩選

長安の春

遊仙窟

大唐西域記

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絲綢之路、旅程未だ半ばなり kanegon @1234aiueo

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