第13話 ディックとミラナと合流

「大丈夫か!? リツぅ!! 心配したんだぜ!?」

「……お元気そうで安心しました、ディック」


 本物らしいディックは律歌に抱き着く。

 ……女子に普通気やすく抱き着ける男ってリアルでいるんだな。

 初めて見た。漫画の世界の住人しか行わない行動だとばかり。

 ……羨ましいと思うべきなのか? これ。

 陰キャな自分でも、そんな大胆な行動できないぞ?


「俺馬鹿だから、元気しかとりえねーよ! 体力バカだからいくらでも頼ってくれ!! 体力くらいしか自信ねーからな!」


 胸元に親指を自分に当てて誇らしげに言うディックに鮮一は呆れる。


「それ、自分で誉め言葉じゃないのわかってて言ってるのか?」

「ん? 誉め言葉だろ? それがどうした?」

「ディック、こんなところで足止め喰らってる場合じゃないでしょ? みんなで通信室に行った方がいいよ。ほら、急ご?」

「って、うわ!? アンタ誰だ!?」


 髪先に綺麗な水色のメッシュが入ったピンクのショートカットの少女は、可憐な風貌で鮮一とディックの間に立っている。美しい瞳にはピンクのハイライトがある水晶にも見える透明度の水色で、目じりの下に細やかな白蝶のハイライトもある。

 彼女は他の星海にある惑星の住人なのは手に取るように理解できる。


「わたしはミラナだよ、りっちゃんが連絡あって先にディッ君が行っちゃったから様子を見に来たの」

「他の負傷者はどうしたんだ?」

「さっき見た負傷者の人たちはある程度動ける範囲まで治したよ。他の人を助けるための力を無くすのはよくないしね」


 首の赤いハートのチョーカーが揺れた。

 夏を思わせる水色の差し色が入った白のワンピースはお綺麗なことだ。

 スカートの裾が揺れるように彼女の頭上からスカートの裾並みにある上に伸びている二つの白いリボンは印象的で、女の子女の子した格好と言われたら俺じゃなくてもすぐに納得する風貌なのだ、ミラナ……さんは。

 耳の横に編み込みしている髪はどこからあるんだろうと思うことよりも、今時ならカチューシャもあったりするらしいからよくわからん。


「……そこの男の子は?」

「彼が流星の子、衛藤鮮一です。センと個人的に呼んでいます」

「そっかぁ、じゃあわたしもセンくん、って呼ぼうかな。ダメかな?」

「あ? あ、あぁ……いいけど」

「よかった、嬉しいな。ありがとセンくんっ」


 ミラナは両手を後ろに組んで自分にキラキラの笑顔で笑いかけてくる。

 彼女自身の愛らしさと可憐さが容姿と性格で醸し出しているではないか。

 夏がメインのゲームで、メインヒロインを張れる女性だと認識する。

 こういう系の子に微笑まれたら、あっという間に落ちそうだ。

 素直に言うと、律歌よりもかわいいきがす――? ん!?

 気が付けば鮮一は律歌に頬をつままれていた。痛い。かなり痛い。


「いでででで、なんでにゃんれふぉふぉ掴むんだひゅはむんら律歌ひふら!?」

「失礼なことを考えてる人間の顔をしていたので」

なんでだよにゃんれらよ!?」

「って、そんなことしてる場合じゃねえだろ!? 通信室なんだろ? 星喰手がいるのは! 三人はここで残って、スタッフの治療を続行してくれ! んじゃ、行ってくるわ!」

「待ってディッ君っ」


 ミラナはディックの服の裾を強く掴んだ。


「うわ、何するんだよ!? ミラ!」

「……ディッ君。ダメだよ? 星喰手はEMSスタッフの全員に傷を負わせてるんだよ? 一人は危ないよ」

「で、でもよぉ……スタッフの人、死んじゃったら家族の人に会えなくなるんだぜ? なら、一人でも先に行った方がいいんじゃ……」

「それを言うなら、私たちも同じことだよ? ディッ君が殺されて泣かないと思ってるの? わたし、そこまで薄情じゃないな」


 彼女の行動は納得だ。相手が多いかもしれないというのに一人での戦闘は無謀という物……ここはメンバーをよく考えるべきだ。


「……で、でもよぉ!」


 泣きそうなくらいに顔をゆがめるディックの言葉の節々に優しさがある。嗜めるミラナも、ちゃんと仲間のことを考慮しての言葉だ。これはどちらかがダメだ、的な責め方はできないな……これは、どっちも間違ってはいないっ。

 律歌の言う通り、人情深く正義感に熱い男なのだとディックを認識するのと同時に理解した鮮一はどうするか迷っていた。ゲーム脳的に言うなら、ヒーラー役であるであろうミラナさんはパーティに入れるべきだ。

 律歌とディックはたぶんアタック系、と認識するべきだろうから、俺、律歌、ミラナさんが無難な気はする。

 だが、ディックの気持ちも汲んでやりたい……こういう時、どうすれば。


「なら、サヴァンが合流するよう今連絡を入れるので、センとディック、私の三人で向かいましょう。それが最善手です」

「え? でも……」

「いいの? リツちゃん」

「大丈夫だミラ! 一応、俺も傷薬とか包帯も持ってるし、なんとかなるって! ミラナほどじゃねえが、どーんと任せとけ!」

「……わかった。ただ、三人とも無理しないでね?」

「おうよ!」

「はい。では、通信室に向かいましょうセン」

「あ、あぁ」


 律歌に促され、俺たちはミラナを残し通信室へと足を勧めた。

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