永遠

 次の日、どんな顔で彼女と向き合えばいいのだろう。自分の発言一つであんなにも怒らせてしまった。言葉って危険だと感じた。そして、自分の愚かさも痛感した。教室に入ると、凍てついた空気が私の爛れた心臓に突き刺さる。皆の視線がこっちを向いたのも束の間、直ぐに目を逸らしてしまった。休み時間にも私の陰口が聞こえてる。彼女が広めたのだろう。私に居場所などなかった。自分は友達を傷つけて、生きていても何のメリットもない。心はもう伽藍堂だ。救いなどどこにもない、他人を傷つけることしか出来ない。そんな人生なら命を絶ってしまおう。その判断をするまでほとんど時間をかけなかった。生というものに対する執念が私にはそこまでないのかもしれない。明日、光差すビルの屋上で最期を迎えようと決めた。


 夜の帷が降りるころ、私は喧騒に包まれた街の中を歩いていた。何処に行っても人だらけ。独りになりたい。周りの目を掻い潜るように私は生きてきた。降り出す雨。人が疎らになるこの天気は私にとって都合がいい。誰からも蔑みの目で見られる事無くこの廃れきった世界を独り占めできるからだ。周りの目を気にしながら大通りの脇道に建っている古けたビルへと足を踏み入れた。煤けた床に所々剥がれている壁紙。私は電球のつかないエレベーターにのり屋上まで上った。道路の反対側を見ると大きな川が流れている。私はこのビルは2つの世界を繋ぐ建物のように感じた。錆びたフェンスを跨ぐ。もう後悔なんてない。もう恐怖なんてない。私は川へと身を投げ出した。「今までありがとう。そして、さようなら。」


この世界は今までと何も変わらない日々が送られている。


 気がつくとそこはバス停だった。行き先は…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

第1章 摩天楼の光 10まんぼると @10manvoruto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ