第20話

フォークルちゃんもミミさんも、それぞれ自分の寮部屋に戻る態勢だ。

 「あ、そうそう時間指定とかそうゆうのはないから安心して。働きたいときに働き、働きたくなければ働かない、食事もしたいときにすればいい。観測者はそんなものだから」

 フォークルちゃんは、箱庭の世界どころか、私がジアンだった時代でもそこまでじゃなかった自由な生活リズムを話されて驚く。

 まあ、堕落しそうだから普通に生活しよう。

 フォークルちゃんは、子どもを私に返し、手を降って寮部屋へと消えた。

 ただ、別れる前に少しだけミミさんと話すことにした。

 「どうかしましたか?」

 ミミさんは子どもを3人持つのは大変だろうという点と、部屋の案内のため最後までいてくれる。

 「子どもたちを助けてくださり、ありがとうございます」

 私はお礼を言った。

 「いえ、仕事ですので。今度儀式典長にあった時も一緒のことを言ってくださいね」

 ミミさんは、なんでもない、といった感じで答えた。

 「でも、ミミさん、旦那さんが・・・」

 ミミさんの旦那さんは陸軍最高幹部、この状況でともに歩めるとは思えない。

 「いいんですよ、すでにAIも遺伝子も作成済みですのでコピーは作れます」

 彼女は強がっているのだろうか。

 「でも、あなたが造ってで本当に意味があるのかしら?」

 その言葉に疑問に思ったのが、ミミさんは聞き返す。

 「どういう意味ですか?」

 「そもそも、今の世界の愛って性欲によるものではないじゃない。偶然存在した気の合う人との出会いで愛が紡がれる。その出会ったものを愛せるのであって、自分が作ったものは愛せないような気がするの」

 そう言うとミミさんは笑い出した。

 「そうおっしゃるなら、あなたはロウさんを食べてるじゃないですか。それと同じですよ。まして、AIは仕えるようにするために書き換えもされてる。大事なのは、その物質ではないんですよ。『出会った人物とつながった愛』だけなんです」

 ピシャリと、ミミさんは否定する。確かに、私のことを言われると何も否定できない。

 『ジア、私はこんな姿になったからと言って君を恨んでないし、愛しているよ』

 ロウもミミさんの言葉を聞いて、愛を伝えてくれる。ぶしっつを拘る必要はないか・・・か。

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 「では、ここがジアさんの部屋です。マスク氏はああ言ってはいますが、あまり外に出ないとマザーに心配されますので、ほどほどで」

 私の部屋の前で、子どもを渡しながら、フォークルちゃんの言葉に補足する。

 「何から何までありがとうね」

 私は、ミミさんにお礼をする。

 「いいえ、ではまた」

 そう言って、元の道を戻っていった。

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 部屋の中は必要最低限度にとどまっている。寝るところ、洗面所、机。私がジアンのときにはありえないレベルのPCが机に置かれている。寝るところに関しては人数分となっていた。子どもをそこまで運び、寝かせる。その後、PCが気になり、起動させてみると、私の知らないアプリやプログラムが入っている。AIが内蔵されて、使われない世の中になると思ったが、そういうわけではないのか。

 『なんだか質素なところだね。昔のときよりもさっぱりしてる』

 ロウは私の目から得た情報では部屋の中を把握する。

 「とはいえ、インフラとかも一通り揃ってるわけだから悪いわけじゃないでしょ」

 そう言いながら、机の椅子に腰掛ける。

 『子供の名前、どうしようか』

 ロウは私が悩んでる内容をともに一緒に相談にのろうとする。

 「元々年齢いってからにしようという話だったから全然考えたこともなかった」

 我ながら、トーナラ国の風習に毒されていたのか、と苦笑する。

 『といっても、年令に達して、その子の趣味や特徴で名付けるし、自分で名乗ることもあるからこのやり方も理にはかなっているんだよ』

 ロウはフォローする。

 そうはいっても今後のことも考えてやはり名前は決めるべきだ。

 「フォークルちゃんのように親が特定の意味や由来を持つ名前でいくにしても外遊だしね。ミミさんのようにまさか、出身地や文化的な背景によって、番号だったりトーナラ国の由来で決めるのもちょっと違う気がする」

 ロウもそれに同意してんん、うなっている。

 『こういうときは、さっと決めるのが案外いいかもしれない』

 ロウが突然決意したように言う。

 「いや、そこはこう考えようよ・・・後AIも使わないでね」

 私はロウの考えに反論したが、ロウは『大丈夫だよ』といって、喋り続ける。

 『まずは、長男の名前はカルロス。おそらくこの人がリーダーシップで尊敬される人物の一人として挙げられるから。次男はプロスワ。マネジメントで尊敬される人物の名前から取った。最後に長女はアンジェ。この世で一番美しい女性になってほしい』

 ものすごい、まともな名前が候補に挙がってきた。

 「えっと、私もそれで賛成でいいわ」

 正直反論の余地はない。明日にも子どもたちには私たちが付けた名前に同意してくれるか確認を取らないと。

 「ロウ、流石だわね。ありがとう」

 私は彼にお礼を言った。

 『これから、入浴だよね。スリープモードにするから入りなよ』

 そして、次の行動も読んでくれる彼。

 これから、多くの試練が待ち受けているんだろうな。でも、ロウがいてくれるならきっとどうにかなるだろう。私は不安を感じながらも、大きな力が味方してくれていることを嬉しく思い、服を脱ぎ、浴室に向かった。

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私は食べました 神楽泰平 @iykagura

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