第19話

「「「う、気持ち悪い」」」

 私、フォークルちゃん、ミミさんは私とロウの子ども三人をおんぶして、移動している。

 「子ども重いでしょ、申し訳ない」

 私は二人に謝るが、「いいのよ未来の生産物は宝だから」と喜んで受け入れてくれる。観測者としては、あくまで子どもは生産品なのね・・・

私とロウ、子どもたちがこれから暮らす場所は、フォークルちゃん、ミミさんと同様にビルの中にある量部屋で暮らすこととなっている。場所は地下3階だそうだ。

 「そう思ったら、トーナラ国ではもうないんですし、子どもたち3人の名前を考えたほうが良いのでは?」

 ミミさんがエレベーターの中で指摘された。たしかに言われてみればそうかもしれない。

 『ロウ、子どもたちに名前をつけましょうよ』

 私は、ロウに伝えると、

 『そうだね、でもなんてつけようか』

 と、思案している。

 「まあ、部屋でゆっくり考えなよ」

 ミミさんは焦る必要はない、と答えた。

 「そう思ったら、二人はどうしてその名なの?」

 私は名前付けの参考にしようかと思い、聞いてみた。

 一番最初にフォークルちゃんが答える。

 「私の場合、なんか遺伝子で選ばれた人の趣味で日本の音楽好きってことで、何かのバンドから名付けられたみたい。私は生まれてこの方、歌には一ミリも興味持たなかったけど」

 遺伝子で決定する生まれも育ちも、案外生前の人の人生から辿られることは意外だった。それにしても、フォークルちゃんのラストネームっておそらく。

 「やっぱりわかっちゃうよね。AIを脳に入れる研究を大成させた人の家系だよ」

 彼女はあっさり答える。

 「それのせいか知らないけど、やたらといろいろな物事に関心があるんだよね。だから、多くの世界を観察できて、その中で興味あることを挑戦したりするチャンスが増える場所はここだろうと思い、今はここに仕えてる。超一級の血統だし、いかんせん私もAIも優秀だから、そのうちにはなんか人々のために新しい物作んなきゃいけないんでしょうけど」

 子供っぽいと見せかけて、かなり思考は立派な持ち主だった。箱庭でも通じる家系へ乗っ責務なんかも感じてしまう。

 その後、続けてミミさんが話す。

 「私は、33番目にマザーによって作られた人工人間です。なので、AIとかも劣化品でもう少ししたらアップデートしてくれると思います。ちなみに、これで10回目ですかね。人間の身体を与えられたのは。今までは、どうも遺伝子と私自身のAIが合わなかったみたいで」

 ミミさんはあっさりという。33番目に造られた人な上にそのうち10回目はやり直してるって・・・ますます疑問になる組織だ。そこまでして、なぜ人々を管理しているのか。

「基本的に造られた人間とAIが適合できるまでは何回でも同じAIを使うんですよ。それに私のAIの家系もなかなか立派なものだそうですし」

 「潜在的に私と相性悪いAIみたいですけどね」

 フォークルちゃんが『相性が悪い』に反応して、口を挟む。ミミさんはそれにちょっとむっとなってフォークルちゃんに話し出す。

 「そもそも、あなたは『祖』のような存在でしょ。実際マザー造った家系でもありますし」

 ここからなんだか、議論ぽっいけど、ちょっと口喧嘩をしだしてしまった。私は、話が進まなくなることもあり、話題を戻す。

 「ミミさんのAIってなんの家系なの?」

 すると、あっさり口論はやめて、私の質問に答える。

 「・・・私は箱庭にいるときも存在を隠すんですが。本来は『アルトマン』の家系だそうです。一応続柄としては『AIを人々に知らしめた者』となってます」

 あぁ、察した。フォークルちゃんもミミさんも歴史の教科書で出た2大重要人物だ。片方は尊敬していたけど、いつしかライバル関係になって超仲が悪くなったんだっけ。そのことを伝えると二人は「まあ、最後は協力し合ってマザーをつくったんですよ」と返してきた。

「なんか、嫌な予感するけど。マザーって何?」

 フォークルちゃんとミミさんは二人で顔を見合わせて説明するか迷っている。しかし、意を決して説明する。

 説明してくれるのはフォークルちゃんだ。

 「『マザー』は世界最高AIを開発するために造られた機械です。また、ああ見えて肉体も存在するわ。今は、肉体は別のところに保存してあるけど。その肉体の遺伝子に使ったのが『マザー・テレサ』だったこと、そして、あまりに優秀なAIのせいで人々に管理を任されるようになったからマザーと呼ばれるようになったわ」

 色々情報が交通渋滞を起こしている。

 「まあ、あのマザーはコピー品で本物と呼べるものは別だったりするけど。概要としてはこれくらいになるけどなにか聞きたいことある?」

 フォークルちゃんはあまり話したがらないみたいだが、その情報を聞いて、確認しておきたいことがある。

 「なんで、あんなに優生思想的なの?」

 今度はミミさんが話す。

 「回答としては『マザー・テレサ』だからです。あの方は」

『1910年8月26日にアルバニアのスコピエで生まれ、1997年9月5日に亡くなったカトリック教会の修道女であり、慈善活動家。本名はアナジェザ・ゴンシャ・ブヤルディで、1928年にインドに移住してからはアグネス・ゴンザ・ボヤジュと名乗っている。

マザー・テレサは、貧困、孤独、病気、死に直面する人々を支援するために、1950年代に自らの修道会「愛の宣教修道女会」を設立した。彼女たちは、インドだけでなく世界中の様々な国で活動し、孤児院、老人ホーム、病院、ホスピスを設立し、犯罪者やホームレスの人々を支援しました。マザー・テレサの人道的な業績は、世界中で高く評価され、1979年にはノーベル平和賞を受賞した、ってAIが出力してるけど、それならそんな思想にはならないような』

 ロウから指摘を受ける。それをミミに伝えると、

 「あなたが、生きた時代でもその認識だったのかしら。というか、AIがその時から規制が酷かったのかしら。今では修道会の資金管理の実態の不透明さ、言論圧力、宗教を無視した強制洗礼、黒い交際、慈善活動なんてマスメディアの印象操作だし、医療ケアは一切なく。そして、彼女がAI用の装置として採用されるに値する最悪な特徴は何よりも優秀だったのが、黒肌の人間を誘惑や怠惰から救うために活動したい、という植民地化における白人女性の最も純粋な典型だったからよ」

 えっと、それって聞いて大丈夫なやつ? ロウも『さすがにトップを揺るがす内容だよね』と情報が出るせいで無視はできなく辛そうだ。フォークルちゃんに関しては、普通に聞いてるし、うんうんうなずいている。

 「大丈夫よ。私たちのAIは超重要なデータが詰め合わされたものだし。消そうとしようものならマザーを滅ぼす戦争が始まるわ。だから、マザーも私たちを処分しないし、むしろ情報を受け入れた人間こそ、価値のある人間である、という認識まで『改造』はしているから。つまりは、その遺伝子思考を利用して。『常に正しい行動に徹するAI』を作成した、ということ。ま、造った当時から『人類を救うのは白人お金持ちだー』なんて宣って富裕層を和らげようとしたんでしょうけど」

 そんなとんでもない話を聞いているうちに、エレベーターが目的地に到着した。

 「子供の名前を付けたら、教えて。せっかく仲良くなったのに三人とも名前がわからないし、全員に同じ内容を伝えてるみたいでやなのよ」

 ミミさんは指摘する。そもそも変なしきたりなんだよな、トーナラ国は。

 『大体、皇帝が決めたことだけど、どうせ死ぬ率が高い者に愛着を沸かさないようにするためだとか』

 ロウは、一応しきたりのフォローを入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る