第18話
私のAIとロウのAIに子どもたちがここまできた経路の情報を受け取る。
「お姉さん、怪しかったからこの方法ができることを隠してた」
子供の成長は恐ろしいものだ。そして、儀式典長さんにはまた借りができてしまったようだ。
「フォークルちゃん、ミミって人と知り合いならお礼を言いたいし、食事も一緒にしたいわ」
フォークルちゃんは、それを聞いて、「えぇ、あいつと」と言った明らかに嫌そうな顔をする。
「あら、申し訳ない。もしかして仲が悪かったの?」
私は直ぐに訂正をする。
フォークルちゃんは否定する。
「いえ、嫌いとかじゃなくてうちの組織の戸と関わるのが面倒なだけで」
そう言いながら、AIでミミ、という方に連絡を取っている。しばらくすると、ミミと言われている方がエレベーターを使って現れた。
たしかに情報の通り、芯の強そうな女性である。
顔を見た瞬間、子どもたちも笑顔だった
「まさか、みんなで食事を取りたいとかで呼ばれるとは思いませんでした」
ちょっとミミはイライラした様子だった。
「すみません、やはり辞めて法が良かったですか」
ミミにも謝罪をする。
「いえ、私たちは家族とかそういうのはないものですから基本食事はいくら広い場所であっても黙々なんですよ。箱庭の方にいたときに団欒食いはしているので、問題ないです」
団欒食いって、観測者側では言うんだ、そういうの。
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食券式、というわけではないが、食券機らしきものがある。
「好きな食べ物を念じて、あれば注文が確定するよ」
フォークルちゃんは説明をして、さっさと中に入る。
「え、フォークルちゃんはもう決めたの?」
私はあまりの速さに驚く。
「AIに依頼するような形なんだよ。だから、店にその内容があればその場で注文できちゃうの」
そう言って、真ん中くらいの位置につくと、すぐに機械兵がメニューを持ってくる。
あれか、冷食ですぐに出してるのか。
「すごーい、あたしもやってみる」
子どもたちも真似て、すぐに食堂の中に入って、フォークルちゃんの近くに座る。すると、すぐにメニューが出てくるが・・・お菓子ばっか!
「さすがに、それはやめて。ちゃんとしたものにして」
私は機械兵にメニューを戻すようにAIで侵入して命じる。
「お、AIの扱い慣れてきたね」
フォークルちゃんは私がAIを使いこなしたことにテンションを上げている。
とにかく、その喜んでる姿を無視して、子どもたちの分も含めてメニューを想像する。
すると、『受け付けました』とアナウンスがくる。
結果は・・・肉料理と魚料理がそれぞれ✕5登場した。
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「ぎゃははははははははははははっははははははは、ひいひい、いやぁ・・・ふふふっ」
フォークルちゃんは大爆笑して、もはや手を付けられない。
子どもたちは両方を遠慮なくもぐもぐ食べる。
私とロウはというと
「たしかに趣味違うけど、ちょっとは察してよ! どうするのよこの量」
ロウはあまりのノイズから機械兵にAI移動してボイス機能を無理やりくっつけて発言する。
「いや、だって久々に魚が食べたかったし」
もう完全な犬も食いたくない夫婦喧嘩が始まった。
「お姉ちゃん、これおいしい」
子どもたちはわたしたちの様子を悟って、会話はミミさんとしている。
「まあ、一応箱庭から取れたのを瞬間輸入しているから、かなり美味しいだろうね」
スプーン、フォーク、ナイフは完璧に扱える子どもたち。おそらくAIでやり方を伝授されているのだろう。
「しかし、食欲旺盛でだいぶ食べてるけど。残ったらどうしようか。マザー、地味に食べ物には厳しんだよな。貴族のときで少しは物食べれるけど元々栄養食だし・・・」
ミミさんは困り顔をしている。
「タッパー用意してもらっても明日の朝にするのも難しいわよね。わたしたちの身体そのものは弱っちいし」
フォーリナちゃんも困ってしまっている。
「いいです、もう。身体は入れ替わりながら私一人でなんとかします」
私はでん! とプンプンしながら座り、ロウも私の方に戻ってきてる。
「お母さん、ごちそうさまでした」
子どもたちは満足そうにして、食事をきれいに『残した』。もうこれはたくさん。
フォークルちゃんとミミさんはすでに肉料理と魚料理の皿を一つずつ取ってくれて食べている。
「ここの食堂、あまり使ったことないけど結構美味しいね」
フォークルちゃんはふむふむと堪能している。
「だな。この尾で一番美味しいとまでは言わないが、あきない味だ、うん」
二人はいつの間にか仲良くなった。・・・正確にはそうじゃない。二人の頭の中を除くと
『『いや、この量はしんどいぞ』』
本当にすみません・・・親の責任として、せめてちゃんとこの量は食べないと。
まずは私の好きな肉料理を一口食べる。
冷凍食品だが、私たちの時代とは明らかにスペックが違う。ものすごく美味しい。ジューシーで柔らかく、口に入れるととろけるような肉の味わいがあり、肉本来の旨味がしっかりと引き出され、繊細な香りとともに口いっぱいに広がる。肉の表面と、中から溢れる肉汁が絶妙なバランスを瞬時に、食欲をそそるようになっている。肉の中心部までじっくりと火を通してあり、ジアンの時代だったら、贅沢な一品だ。ここ数日まともに食事が取れていなかったので、肉の質感と香りを一口食べるごとに幸せになる。
こどもたちも「お母さん、美味しそうに食べるね」という顔。フォークルちゃんもミミさんも「そこまでか」という顔をしている。
『私もいいでしょうか』
ロウが申し訳無さそうに尋ねる。しょうがないので入れ替わってあげた。
ロウは魚料理を一口食べる。
「これは・・・」
新鮮な海の香りが口に広がる。事前にジューシーでふっくらとした身が絶妙に調理されている。見た目も色鮮やかで美しい盛り付けが食欲をそそる。軽やかで爽やかな味わいが心地よい。身の旨味がじんわりと広がり、食べ応えのある一品だ。これは、本当に冷凍食品なのか。
「お父さんに戻ったんだね、おいしいよね」
子どもたちが嬉しそうに食べる私の姿ににこにこしている。
「ああ、美味しいね」
そして二人で交互に入れ替わりながら食事を取る。フォークルちゃんとミミさんはすでにリタイア状態。お空を見ている状態だ。子どもたちは三人揃ってコクコクし始めている。
私とロウで食事をしながら必死になる。なんとか肉料理と魚料理が残り一皿ずつになったところで二人で波長のあう一言。
「『いや、やっぱ流石に多いわ!』」
『hjbりおえb;mかあけl;、b¥。;:エラー、hまお;rb,fld;zエラー』
『現在、内蔵以上の食事を接種しております、危険ですのでおやめください』
ロウのAIはバグりだしている。私のAIは危険信号を発している。
後、本当に最後なんだ。疲れ果て、お腹いっぱいになり、食当たりに怯える私。周りはすでに応援するものもなく、ただただ静寂。機械兵なのに底から感じる視線は「早く終わってくんねぇかな」という痛々しさ。非常に大量で、困難な場面となっている。それでもやり遂げなければ・・・もしかしたらあのミミさんが言ってた「マザー、地味に食べ物には厳しんだよな」とあの枯れ果てた人間の姿が浮かばれる。もし、ここで初日からマザーに迷惑をかけたら・・・みんな死んじゃうかもしれない。
私は、孤独に最後に取り掛かる。一つ一つが重い。それでも取り掛かり続け、ついに。
「ごちそうさまでした」
綺麗さっぱり食べ終えたのである。
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