赤い時計

高黄森哉

赤い時計


 綺麗な赤い懐中時計に、


 ぴったりと耳を付けて、


 秒針が作動する音を聴くのが、


 僕は好きだった。


 金属の冷たさが、


 頬に伝わる。


 さて、この美しい大好きな時計は、


 どのように動いているのだろう。


 裏にネジがあって、


 バラすことは容易だった。


 とても細かい部品が机の上に散らばってしまい、


 戻すことは無理だった。


 完璧にはめ込んだはずなのに、


 どこか歪んでいるのか、


 時計の腹に耳を押し当てても、


 もうあの音は聞こえない。


 この綺麗な赤い時計は、


 死んでしまった。

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赤い時計 高黄森哉 @kamikawa2001

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