失速し、歪んでゆく世界

saito sekai

シュールな関係

川緣で、日向ぼっこをしていた亀を見た兎は、イタズラ心を発揮して背後からそぉ~と驚かそうとしたが、いち早く察知した亀に、川に逃げられてしまった。その素早さに思わず「亀の奴、案外機敏じゃないか」と兎は唸った。それを聞いていた猫が、「こうなったら、スイカの早食いで亀と勝負したらどうですか?」と提案するので、亀にマウントを取られ、名誉を挽回したい兎はその気になった。がしかし、スイカをどう調達したら良いのか分からず、猫と共に頭を抱えていたところ、亀が現れ「私が畑から取ってくる」と言うではないか。


そうして亀は、畑に忍び込んでスイカを物色しだが、それを人間に見つかったのだった。「この亀、とんでもないな!」すると亀は「竜宮城にお連れしますから、どうか許して下さい」


そして亀とにわか浦島太郎は海に消えて行く。それを憮然と見送る兎と猫。不意に猫が兎に向かって呟いた。


「こんな展開になるなんて…ねぇお母さん」


はぁ?お母さんって…兎は不思議な顔で猫を見つめたが、奇妙な世界に身を投じて行くのが正しい様に思えて、猫と家族になるのことを決めたのだった。    完

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失速し、歪んでゆく世界 saito sekai @saitosekai

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