見目麗しい少年「凍夜」はある日、自身の母が遺体で発見されるという人生の底に突き落とされます。父親は少し前に不審な死を遂げ、亡くなった母のお腹には生まれる前の妹がいた。彼は全てを失い路頭に迷いますが、そこを救ってくれたのが枝鳴長屋の心優しき面々。
凍夜は長屋で次第に元気を取り戻しますが、どうやら家族の死は誰かに仕組まれたようだと気がつきます。そして彼が選んだ道は、殺し屋になって復讐を果たすという茨の道でした……。
復讐に燃える少年の人生、という重めのテーマのこの物語は、生き生きとしたキャラクタ達がそれぞれの生き方を「行動」で体現する大河ドラマのような重厚さがあります。
特に今回のテーマは「復讐の是非」なのですが、キャラクタ達の行動があるからこそ物語に説得力が生まれ、読んでいて本当にハラハラしてドキドキして、読書する喜びを再認識できる──、そんな物語になっています。
さて、凍夜の選んだ「復讐の結果」とは。その目で是非、体験して下さい。本当に面白いですよ!
かように仲睦まじく過ごしていた家族がありました。一人息子はたいそう優しく、美しい少年であったのに。
彼を取り巻く運命は、非情なる行いによる親の死により変わってしまったのです。
少年は自らを捨て、殺し屋になります。
しかし殺し屋にも流儀たるものがございます。
茶屋にて舞い吟じる流儀と同じく、相手を闇雲に殺めるのではありませぬ。しかるべき相手を、然るべき所作で遇するのでございます。然るべき理由をもって。
少年は学び、育って参ります。他から教えられながら。そして新たに生きるのです。
深き味わいを得るには心構えも必要です。
一作目からお読みになればなおのこと、興が増すことでしょう。
柏原にて、お待ち申し上げます。
(この評の体裁については、本作をお読みいただければお分かりになることと存じます。これにて次のお座敷に参りますね)