終わる日まで、戻らないあの日に思いを巡らす

異質な才能を持っていても、持ち主が扱いきるには別な才能が必要になのだろう。

カムパネルラとは、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に登場するジョバンニの友人で、裕福で人気者の優等生。
友人を助けるために川に入ったカムパネルラが溺死していたことが明かされる。
死んでしまったカムパネルラとの別れに悲嘆するジョバンニ。
しかし、彼は旅の中で「ほんとうのさいわい」を求める覚悟をする。

ジョバンニが「ほんとうのさいわい」と問いかけたとき、カンパネルラは「わからない」と答えている。
すべての人にとって「ほんとうのさいわい」とはなにか、存在するのか、考えても答えは見つかりそうにない。それでも求めて問い続けいく。

主人公は、未来予知で新幹線が橋から落下するのを知って溺死することを恐れていたとき、数年前に人助けしようとして溺死した男の顔を思い出している。
他者に貢献する自己犠牲が、ほんとうのしあわせなのだろうか。
主人公は、カムパネルラの如く助けようと溺死した彼のような行動もできず、未来予知のごとく落下していく。

主人公のように諦め、あるがままを受け入れることも、「ほんとうのさいわい」の形なのかもしれない。