子爵家次男の淡々とした日々

南瓜の王冠

第1話 プロローグ

高校生の身で若くして死亡し、異世界の子爵家次男に転生して早15年最低限の教育を終えたので冒険者をここ7年くらい楽しんでいたら急に父親から呼び出しを受けた。


特に呼ばれる様な事もなかった筈だが何かあっただろうか?自分で言うのも何だが自分は何処にでもいる冒険者になった貴族子息だ。余物で予備の貴族令嬢令息の進路なんてこんなものだ。現実は何時だって世知辛い。


我がオルルカン子爵家には優秀な姉や兄に妹達がいた筈だが…

さて、そろそろ余計な事を考えるのを辞めて直接聞くか。父親の執務室の扉をノックして声をかける。


「しつれいしま〜す。ジェイルなんですけど〜」


適当なのは許して欲しい…面倒くさいのだ家で位別に良いだろう。


「はぁぁ……ジェイル、入れ。」


扉を開けるよそこにいたのは相変わらずの若々しい面をした優男見たいな顔の父親だった。何と言うか…やっぱりあんまり自分と顔が似ていないなと思う。


まあ父親は顔こそ優男だが苦労性の一途な男だ浮気はしないだろう。若い頃どころか今だにとてもモテると聞くが。


「何故呼び出されたのかは判っていると思うけど…判ってるよね?」


ごめん知らない。本当に御免、まるで長年信頼していた親友に裏切られた様な顔をしている父親には悪いけど本当に何も思い出せない。何かあったっけ?まああるだろうな、自分に心当たりが無いだけで。如何にも興味が無い事は前世から憶えてられない。


「………あ〜その…あれっすよね…あれあれ…あのあれ…はい…憶えてます…はい…本当です。嘘じゃ無いです、自分に嘘吐かせたのなら大したものです…はい。」


知らない(二回目)


「嘘でしょ…貴族の義務何だけどな〜……はぁ…しょうが無い…学園だよ学園。王国貴族は15で通う決まりでしょ。思えばジェイルは昔からそう言う感じだった…話を聞いている様で全く聞いてないし、都合の悪い事はすぐ忘れる、ジェイルの悪い所だ。年々誤魔化す事ばかり上手くなって、過酷な冒険者稼業で少しはまともに成るかと思えば冒険者を理由に定期報告を度々サボる始末。はいそこ、さも聞いてる様な顔をしながら聞き流さない。」


親愛なる我が父親は一度説教すると大変…大変長いのだ。たとえ親不孝な事だったとしてもマトモに聞いてられない。


「取り敢えず、判ったね。学園にはしっかり通う事。絶対だからね。細々とした事は追って説明するよ。」


面倒くさい…面倒くさいが義務なのだから仕方ない。貴族社会の面倒くさいあれやこれやが嫌なのも大部分を占めて冒険者をやっていたのだが。そもそも転生者に貴族は無理だろ。何と言うか心が擦り減っていくのだ。帰りたい…ここが実家だが。




《父親side》

処理すべき書類が一段楽した頃、僕は執務室で頭を悩ませていた。

原因は突然旅に出て冒険者になった次男…ジェイルだ。

王命とは言えあの子に任せるのは不安がありすぎる。事情は判るが何故よりにもよって我が家の愛すべきアホの子を選ぶのか。


「失礼ですが…旦那様、ジェイル様にあの件をお伝えしなくて良いのですか?」


あの件…そう、あの件だ。


「勇者様の弟子入りの件は追々伝えるよ。今伝えると正直考えたく無いけどあの子は他国まで逃げかねないからね。」


あの件…公爵家三女にして今代の勇者であるユーリ・アルストラ嬢をジェイルに弟子入りする様にと言う王命。


勿論だが裏がある、今回の件の実情は”勇者と繋がりを作りたい一部の面倒な貴族への牽制”だ。あの子自体の実力は関係無い、と言うか貴族間でのあの子の評価は”オルルカン子爵家の厳しい稽古から逃げ出した軟弱者”だ。実際ジェイルに才能は無い…正直言って国内有数の武闘派貴族であるオルルカン子爵家出身でありながら平凡としか言いようの無い才能の持ち主だ。冒険者としては5級…一般的な普通の冒険者らしいし。何処に居たのかは知らないけどさっき見た限りは隙だらけで警戒心もまるで無かったからそこまでの実力じゃないと思うんだけど…余りにも自然すぎて違和感があるんだよね。


問題は、実力がないのに牽制に成るか如何かだけどそれについては正直問題ない。オルルカン子爵家に戦いに関わる件で文句を言う貴族家は正直言って殆ど無いから。それだけ家の名前は大きいし、一部の貴族達もこれが忠告を兼ねていると気づいてるだろうしよっぽどの事が無ければ問題はない筈。


…大丈夫だよね?…頼むよジェイルお願いだから出来るだけ問題を起こさなでくれ。

正直すでに胃が痛いんだ僕は。




《???side》

「ふみゅふみゅ…ジェイル君かぁ〜どんな人何だろう?まあ会えば分かるかっ!」


事情は何となく察しているけど少しだけ楽しみだな。

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