最終話【ご主人様の隣でずっと一緒に過ごしたかった……】
『――うわあっ、きれいな夕焼けが見える!! ご主人様、早くこっちに登って来てください、なずなの隣なら特等席でこの景色を
なずながデートで絶対に行きたい場所とは俺の
「なずなは本当に面白い女の子だよな。屋上から見える景色なんて別に珍しいもんじゃないのに
屋上のいちばん高い場所に設置された丸い給水タンク、通称メロンの横にある階段に二人ならんで腰かける。
屋上にあるこの場所をなぜ知っているのか? それは数少ない友人を除けば出来るだけ他人との接触を学園生活でも避けているからだ。ぼっち飯にもずいぶん慣れたな、余計な
『やっぱりご主人様は物知りですごいです……。なずなは尊敬しちゃいます』
「ええっ何でそうなるの!? 別に偉くも何ともないよ。こんなの役に立たない知識だし」
『役に立たない知識じゃありませんよ、ご主人様。屋上から見える夕焼け空の
「……なずな、君はそんな想いを!?」
寄り
『ううん、ご主人様から与えてもらえたのはこの景色だけじゃないです。……時間がなくなるから正直になずなの気持ちを伝えます。私の話を聞いてもらえますか?』
「ああ、俺もぜひ聞きたいな、なずなのことをもっと知りたいから」
『……うふふっ、じつはその言葉を待っていたんですよ。ご主人様は私がなぜ現れたのか聞いてくれないから、なずなのことなんかぜんぜん興味がないのかって落ち込んだりしましたから』
――その反対だよ、なずな。
君について真実を知るのが怖かったんだ。耳にした瞬間、まるで魔法が解けたみたいに俺の前からなずなが消え去ってしまうんじゃないかって。
『思い出したことを話しますね。すべてのプラモデルに私みたいに心が宿るわけじゃないんです。私たち
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。いきなり情報量が多すぎてにわかに理解しがたいけど、俺が住むこの人間世界とは別に存在する場所があって、なずなはそこで学校に通って生活していたんだな」
『さすがは呑み込みがはやいです。じゃあ話を続けますね。ご主人様が私に名付けてくれたプラモデル彼女の愛称ぷらかの! は
なずなの表情が途端に
「もしもご主人様選びに失敗したら君はどうなってしまうんだ!?」
しばし言いよどんだ後で、なずなは俺の目をしっかりと
『……うたかたの泡のごとく消えてしまいます』
「なずなが消えちまうだって!! それは
『ご主人様、なずなが自分で選んだ人があなたなんです。もし消え去ったとしても絶対に後悔はしません』
「ば、馬鹿言うなよ!! お前が消えちまったら俺はどうなるんだよ……。なずな!? さっき時間がないって言ったのはまさか!? 一緒に暮らそうって約束したばかりじゃないか、将来奥さんになって家計簿をつけてくれるんだろ!! 絶対に駄目だ、ご主人様として許さないからな」
『……お前って初めて呼んでくれましたね、とっても嬉しいな。本当の奥さんになれたみたい。それにご主人様の手はとてもあったかいです。この指先が私に人間としての命を与えてくれたんですよね。ああ、もっとなずなをしっかりと抱きしめて下さい』
「なずな、頼む、俺を一人にしないでくれ……。俺が過去から立ち直るきっかけを与えてくれたのはお前と出会ってからなんだ」
『最後にもうひとつご主人様のいいところを見つけました。涙もろいって部分、なずなと添い寝した夜も私のために泣いてくれた』
「……なずなと出逢えて本当に良かった」
『私もご主人様と過ごした時間が何よりの宝物でした。持っていけないのが残念だけど、もしもあなたの心の片隅にでもその宝箱を置いてくれたらなずなはそれだけで幸せです』
なずなの
『ご主人様の隣でずっと一緒に過ごしたかったです。えへっ、最後まで妄想少女でごめんなさい。同じ部屋に住んで、同じ街に暮らして、私も人間の女の子みたいに普通に
「なずなっ、俺も同じだ!! だから戻ってこい、このまま消えるな」
『ご主人様、大好きでした、さよなら……』
なずなを抱きしめていた腕が不意に
――彼女は俺の前から消えた。
*******
また一人暮らしの日々が始まる。
大量の買い物袋を抱えて自宅のドアを開けた。玄関に置かれた紙袋のひとつが倒れ、中身の商品が床に
「なずな、ただいま!! って言っても誰も答えるわけないのに俺はどうかしてるな」
床に落ちた商品を拾い上げる。
「これは!? なずなとひとつだけ人間用のお店で購入した服だ」
『……おかえりなさい、ご主人様!!』
顔を上げた俺の視界に映ったのは……。
「ええっ!? 嘘だろ。なずなが何で家に居るの。消えたんじゃなかったのか!!」
『てへへっ、どうやら私の勘違いみたいでした。じつはお腹が
「はああああっ、びっくりさせんなよぉ!! 完全に消えちまったかと思ったのに」
『ああっ、それはお揃いのパジャマだ!! ご主人様、さっそく着替えてもいいですか?』
「ううっ、もうなずなの好きにしてくれ、俺は混乱し過ぎて訳が分からなくなったからさ』
『じゃあ、ご主人様の奥さんとしてさっそく質問しちゃいます。あなた、ご飯にする、お風呂にする、それともパジャマ姿のなずなを最初にする♡』
どうやらなずなとの同棲生活はまだまだ続きそうだ。いや新婚生活と言わないと怒られるな。
『ふつつかなぷらかの! こと
ぷらかの! こえけん版おしまい。
【作者からのお礼とお願い】
最後までお読み頂き誠にありがとうございました。
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普段は下記のような恋愛作品を執筆しております。ご縁がありましたらぜひご一読よろしくお願いします。
【桜が咲くこの場所で、僕は幼馴染の君と二回目の初恋をする】
ぷらかの! 売れ残りの福袋を買ったらなんと中身はJKが入ってた!? ~S級美少女な彼女が出来ていきなり同棲が始まっちゃった件~ kazuchi @kazuchi
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