第六話【ご主人様と初めてのデートでいちばん行ってみたい場所は……】
「ごめん、なずな。君にぴったりフィットする服が売っている店の存在にもっとはやく気がつくべきだった……」
『いえ、謝らなければならないのは私のほうです。ご主人様が福袋を買った模型店ならお洋服や下着もいっぱい品ぞろえがあるのにすっかり忘れていましたから』
「俺はプラモデルや美少女フィギュアには
『はいっ!! ご主人様が熱心に売り場を眺めてくれてなずなもすっごく嬉しかったです。なんだか本物の恋人どうしが仲良くお買い物デートしているみたいで』
――なずな、これは本物のデートだよ。
俺はツッコみたくなる無粋な気持ちを
『ご主人様に無理をさせていないですか? つい甘えてこんなにお買い物をしてしまって。結局、本物のお洋服代より高くついてしまったかも……』
「ははっ、なずなは細かいことを気にすんなよ。家計のやりくりにうるさいのは姉貴だけで沢山だからさ」
『そうはいきませんよ、ご主人様!! これからはひとり暮らしじゃないんですから。家計簿やおこつかい帳はしっかり管理しなきゃ駄目です』
「えっ、なずな、俺の奥さんになって家計をやりくりしてくれるの?」
『ふえぇっ!? 私がご主人様の奥さんに!! ……いきなり言われても心の準備が出来ません』
「ふ~ん。じゃあ何かの聞き間違えかな。なずなと部屋の模様替えをした夜。いつか私が本当の人間になれたらご主人様のお嫁さんになりたい、って言われたのは俺の見た夢だったのかな?」
『もうっ!! ご主人様は本当にいじわるです。……それはなずなの妄想ですけど確かに言いました。いま思い出しても照れちゃいます』
頬を赤らめた横顔。そんななずなの可愛い表情を見たくて俺はつい調子に乗ってしまう。
「でも模型店で、なずなは俺の前から何で急にいなくなったんだ。また下着売り場みたいにプラモデル
『そ、それは、ご主人様……』
「ふ~~ん、まあいいよ。これ以上いじめて、またなずなに泣かれてもかなわないからな。それより今回のデートで君の行ってみたい場所っていったいどこなんだ? まさかさっきの模型店じゃないよな」
『……あの模型店にはすごくお世話になりました。なずなのふるさとみたいな場所には違いありません。こんな出来損ないの私をずっと店先に置いてくれました。ふたたびあの場所を訪れて少しずつ思い出してきましたけど』
「なずな、いったい君は何を思い出したんだ?」
『それは
「女子高って
『はいっ!! 友達や先輩は私のかけがえのない存在でした』
なずなの語尾に妙な違和感を覚えた。過去形になっているのはなぜだろうか?
『あっ、ご主人様の質問にまだ答えていないですね。なずながデートでいちばん行ってみたい場所。これからその場所に私を連れて行ってください』
「えっ、俺が連れて行くって!? どこだか場所を知らないよ」
『ご主人様がいつも通っている場所ですよ。さあ急ぎましょう、日が暮れてしまう前に』
「あっ、なずな、そんなに手を引っ張るなよ!! 下着屋さんの
『うふふっ、想像しただけでご主人様の慌てっぷりが目に浮かびます』
「こらっ、なずな、さっき俺がいじわるをした仕返しをしてんな。承知しないぞ!!」
『あっ、すぐにバレてしまいましたね。ごめんなさい、ご主人様』
「仕返しをする仕草も普通の女の子っぽいよな。君が数日前まで模型店の棚に並んでいたプラモデルなんて信じられないよ、まったく」
「次の目的地に着いてからお小言は聞きますから、さっ、早くなずなをご主人様の通う高校に連れて行ってください』
「俺の高校だって!! なずな、もしかして……」
『はい、今回のデートでご主人様にぜひ連れて行って貰いたい場所です!!』
くるくると猫の目のように変わる多彩な表情も含めて、なずな、君の行動には驚かされてばかりだ。次はどんなサプライズを仕掛けて俺を楽しませてくれるのか……。
いよいよ最終話の次回に続く。
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