沼地の魔法使い

 沼地に魔法使いが住んでいました。

 毎朝沼地には鳥たちが集まってはぎゃあぎゃあと騒いでいました。

 魔法使いはその鳥たちのことがとても嫌いでした。ですから魔法の網を作ってとっつかまえてやることを考えました。

 魔法の網は魔法使いにしか見えないものです。鳥たちはその存在を感知することはできません。それを作って仕掛けてしまえば鳥たちは全滅すること必死でした。

 もちろん魔法の網を作るには魔法の糸が必要です。魔法使いは魔法の糸を手に入れるために森のずっと奥まで入っていきました。

 森のずっと奥のところには巨大な蜘蛛が住んでいました。どのくらい大きいかと言えばみなさんが想像してるより300倍ぐらい大きな蜘蛛でした。

 蜘蛛は魔法使いと知り合いだったので「こんにちは、魔法使いさん」と挨拶をしました。魔法使いも蜘蛛に「こんにちは、蜘蛛さん」と挨拶を返しました。

 「こんなところにいったい何の用でしょうか」と蜘蛛は魔法使いに尋ねました。蜘蛛が暮らしているところは本当に森の奥の奥で誰も好んで入ってこないようなところだったのでおおいに疑問だったのです。

 「魔法の糸が欲しいのです」と魔法使いは正直に答えました。ここにやってくるまでに魔法使いはいろいろ方策を考えてみたのですが、どれもうまくいきそうになかったので正面から頼んでみることにしたのでした。

 「お安い御用ですよ」と蜘蛛は言いました。実際のところ蜘蛛にとっては魔法の糸はたいして重要なものではなかったのです。なんたって自分で好きなだけ生み出せる代物だったのですから。

 魔法の糸を手に入れた魔法使いは喜んで家まで帰りました。

 あとはまるっきり簡単でした。魔法の糸で魔法の網を作るとそれを沼地に仕掛けました。鳥たちは魔法の網に気づくことなく次々と一匹残らずひっかかってしまいました。

 沼地に来る鳥たちはいなくなって魔法使いは毎朝静かに眠っていられるようになったそうです。終わり。

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だれのためでもない童話集 緑窓六角祭 @checkup

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