第38話 終章――

「なるほど……貴君ら二人が魔王を討伐したということか」


 俺たちは国王の前で跪いて報告をした。各所で魔族を倒したこと、そして魔族領の最奥で魔王を倒したことを報告した。


 皆半信半疑だったが、人間の生存範囲で魔族から助けた人たちからの報告もあり、何より魔物が消えるという事実とタイミングの良さからして信じてもらうことが出来た。


 ただし、宰相や大臣たちの言葉はしっかりと聞こえた。


「ただの少年と少女ではないか、二人で魔王を倒しただと……」


「魔王が死んだのに気付いて手柄にしようとしているだけではないか……?」


 などなど、そう簡単に信じてもらえる話ではないが、そいつらもトップである王様が信じてしまったのでそれを否定出来ず、俺たちにギリギリ聞こえる位置で嫌味を言う程度しか出来ない様子だ。


「して……私はお主たちに礼をせねばなるまいな。魔王を倒したなどと言う偉業をなしたものに何をすれば満足する?」


 俺は勇気を出して進言した。


「こちらのマリアは両親を魔族に殺されています。しかし両親ともに商人であり、商人として生活出来るだけの報酬と成年するまでの身元の保証をどうかお願いいたします」


「ふむ……ストーンズ……いや、今はマイナーであったな。よいだろう、その願いは聞こうではないか。して、その娘への報酬は構わんが自分が何を欲しいかを話してくれぬかな?」


 そこで俺は言葉に詰まった。自分の望みか……そして国王になると俺の出自を割り出すの位簡単なのだろう、聞くのも嫌になった名前を聞いてすこし動揺してしまった。そうだな、俺の望みか……


 そうだな、ここまでしてもよく分からないことだらけだったんだ、だとすれば残りの人生は生きることの謎解きに使うのも悪くないだろう。


「私は王立学院の研究者の地位を頂けたら十分です」


 王様はすこしだけ眉を動かしてからすぐ元の顔で俺に話した。


「そんなことでよいのか? 魔王を倒しただけでもこの国に十分な貢献をしたのじゃぞ、その上で国のための研究を続けたいと申しておるのか?」


 別に国のためではない、ただ俺が授かった奇妙なスキルを調べたかっただけだ。しかしそういう勘違いをしてくれるなら願ったり叶ったりだ。


「私に研究室を一つと研究者の身分を与えて頂けるならそれ以上は望みません、誓って正しいことに研究結果を使用いたします」


 このスキルが一生をかければ解明出来るかとはかなり怪しいが、それでも俺は知りたいと思う。こんなスキルが俺に与えられた理由や数々の巡り合わせ、そういったものにもしも理由があるのなら、きっとそれは運命と呼ばれるものだろう。


「よいだろう。お主は今からマイナ-・ストーンズ公爵だ」


 え? ちょっとおかしな言葉が聞こえたような……


「私はただのマイナーであり……」


「よい、全て知っておる。お主たちが報告してからすぐに調べさせた。お主がどこから来たのかもな。ストーンズ公爵、今からストーンズの家名はお主のものじゃ、領主をしろと言うつもりなどない、ただストーンズ領を一番優秀なものに納めて欲しいだけじゃ」


 これは長大な笑い話だろうか? 家から追放されて結局俺が家の正当後継者となる、随分と遠まわりをして元通りの身分が手に入るなんてな、まあストーンズは公爵ではなかったのだが、そこは魔王討伐のサービスだろう。


「では下がるがよい」


 そうしてこの戦いは完全に終わった。俺たちは王宮を出て、そしてそこにはもう既に王宮の馬車が一台、商人用に仕立ててあるものが留まっており、いかにも商人と見える人がマリアにうやうやしく頭を下げていた。


 王様も行動が早いな……直に俺の身分も正式に決定するだろう。


「マイナーさん、私は……あなたに出会えて良かったと思います」


 その言葉の意味は理解している。何故今さらになってそんなことを言うかと言うことだ。


「随分と滅茶苦茶な生活だったが……俺もマリアに会えて良かったよ」


 そしてマリアは俺に向けて片手を差し出した。俺はその手をしっかりと握りしめ、次の再会がいつになるのか、あるいはもう会えないかもしれないということを覚悟して、俺たちは別れた。


 確かに行商をするなら滅多に会えないかもしれない。しかしそれでも、俺とマリアはいずれまた出会うだろうと、なんの理論も理屈も無いのに、直感だけで再会を確信し、俺たちは別の道を歩いて行った。

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外れスキルと復讐少女 スカイレイク @Clarkdale

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