第31話 心臓ドキン
確かにちょっと佳奈って、派手めな感じがするのかもしれないけど、校内の男の子や先輩からだって声がかかるんだよ。でも声をかけてくる男の子って、どちらかというとヤンキー系とか、遊び好きな感じのヤツが多いかも・・・・・
佳奈だってまさか、モテモテ男子の城戸先輩と付き合えるなんて思わなかったよ。でも二人が付き合うことになったのも、たぶん運命なのかなと思っているの。
レベルが高めの中村高校に辛うじて合格して、入学式が終わったばかりの4月の第一週、たぶん金曜日だったと思う。
まだクラスのみんなとも慣れていないし、朝から誰とも口を利かないで放課後を向かえた。高校にはいろんなクラブがあって、先輩たちが次々に勧誘してくるのがすごく面倒だった。
特に昼休みと放課後は、教室の中にこそ入ってはこないが、一歩外に出ると待ち構えていて声をかけてくる。あの日も昼休みにソフトボール、サッカー、バレボールと3つのクラブから声がかかった。
でもなぜかスポーツクラブばかりなの。もしかしたら佳奈の運動神経の良さがわかるのかな?なんて勝手に思いながらも、もちろん全て断った。だってはじめからクラブなんて入る気がないんだもの。
放課後、校舎を出て帰宅するため校門に向かって歩いていた。下校の第一陣で校舎から一斉に吐き出される生徒達は、まだ慣れないためか固い表情をした1年生が多いような気がした。
校門までのほんのわずかな距離にも、何人もの1年生にクラブ勧誘の声がかかる。佳奈にも後ろから声がかかった。
「こんにちは、ねえキミ、ほんの少しの時間でいいから、ちょっと話聞いてくれないかな」
まるで街なかでナンパされてるみたいで、あまり気分が良くなかった。無視して校門に向かう、
「ねえ、1年生の素敵なキミ。ちょっと待ってよ。頼むから少しだけでも話を聞いてくれないかな」
佳奈って、こう見えても中坊の時は軟派じゃなくて、硬派一筋だったんです。男の子とチャラチャラ遊ぶより、女の子同士のケンカの方が得意だった。
あんまりしつこい声がけにブチンと切れちゃった。だって今日は1日中黙っていたし、慣れない授業に緊張してたんだもの、すっかり疲れちゃったの。早く家に帰ってのんびりしたくて・・・・・
「申し訳ありませんけど、私はどのクラブにも入る気はありません」
振り向きざまに、かなり強い口調で冷たく言い放っちゃったの。そしたら後ろから声をかけてきた先輩、びっくりしたみたいで固まっちゃったみたいだった。
目の前に立ち尽くしている先輩、背が高くて、日に焼けた顔がハーフみたいにイケメンで、あまりに格好良くて、佳奈、心臓がドキンと止まっちゃったの。
それが今付き合ってる大好きな『城戸城司』先輩との初めての出会いだったの。呆気にとられてほんの数秒固まっていたけど、直ぐに気を取り直してニッコリ笑ったの。
城戸先輩のそのときの笑顔、まるで太陽みたいに眩しく輝いていた・・・・・
きみがすべて 希藤俊 @kitoh910
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