きみがすべて

第30話 噂を聞いたの

　城戸先輩と佳奈の噂をこっそり教えてくれたのが、隣のクラスの礼子ちゃんなの。佳奈と同じ帰宅部で帰る方向が一緒なので、いつの間にか仲良くなっちゃったんだ。

　だって礼子ちゃんとはほとんど毎日、帰りの電車が一緒なんだもの。しかも電車の乗る場所がお互いに決まっていて、偶然だけど向かい合わせのシートに座ってるの。

　本当は恥ずかしかったけど、初めは佳奈の方から挨拶したら、少しずつ話を始めるようになって、今は同じシートに隣り合わせ。ほとんど毎日帰りは一緒なんだよ。

　礼子ちゃんのクラスにテニス部の女の子がいて、昼休みなんかに他の人と話してるのを聞いちゃったらしいの。佳奈と城戸先輩が付き合ってるらしいって。

　「礼子ちゃん、本当？それでどんな話してたの？」

　「えーっ、あんまりよくは聞こえなかったから･････」

　「でも佳奈と城戸先輩が付き合ってるらしいよっていう話は、聞こえたんだよね」

　すっごく気になったから、礼子ちゃんにしつこく聞いちゃったの。礼子ちゃん、困ったような顔してた。

　「なんかその時の話では、羨ましいなぁっていう感じの話だったよ」

　礼子ちゃん、下向いちゃって口ごもって話すの、絶対なんか隠してるよ･････

　「それだけ？ねえ礼子ちゃん、あたしたちって友達だよね。どんな内容でも絶対に気にしないから、本当に大丈夫だから、ね、お話してよ」

　「うん、別に隠してる訳じゃないんだけど、あんまりよく聞こえなかったから･････」

　たぶん良い話じゃないとは分かっていた。だって佳奈の仲間内でも、城戸先輩いい趣味してるよとか、佳奈にはもったいないなんて言われてるもの。

　もちろんみんな冗談で言ってるんだよ。だってみんな本当に親しい仲間なんだもの。みんなは佳奈のこと、ちゃんと応援してくれてるけどね。

　少しずつ話してくれた礼子ちゃんの話では、初めは、城戸先輩は亜紀ちゃんと付き合ってるんじゃないかなって、女子部員みんなの噂だったんだって。

　テニス部の女子たちは、亜紀ちゃんなら城戸先輩と美男美女で頭も良いしお似合いなのに、などと言ってたみたいなの。

　亜紀ちゃんって仲間のあの亜紀ちゃんのことだよ。確かに亜紀ちゃんはテニス部だし、顔はアイドルみたいにめちゃ可愛いし、頭だってすごく良いの。当然男の子にはモテモテだし、同じ女の子としても憧れちゃうくらい。

　本当はね、佳奈だって城戸先輩と亜紀ちゃんならお似合いだと思ってるよ。だって二人ともまるで王子さまとお姫さまみたいなんだもの。

　でも佳奈だって、そんなにブスじゃないよ。自分で言うの恥ずかしいけど、スタイルだって悪くないもん。身長は160cmあるし、足はすんなり長いし、それに胸だってDカップある。

　身内だから少しは贔屓目なのかもしれないけど、パパなんかいつも佳奈のこと、可愛い可愛いって口癖みたいに言ってるし、夏なんかタンクトップにミニスカで出かけると、ほとんどの男はジッと見るもの。