第九話 蒼井が行方不明?!《中編》

「アイツを最後に見たのはどこだ!」

「教室だよ!でも昼休憩から戻ってこなかった!そこから何かあったのかも……」


 走りながら答える、矢野はクラスメイトを見つけて声をかける。


「あー!ちょちょちょ!」

「ん?おーハルと転校生じゃんー、どした?」

「翼探しててさー!見なかった?」

「蒼井君?さあ……見なかったけど……」

「そっかぁ……」


 闇雲に探すしかないか……そう思っていたその時、思い出したかのようにクラスメイトは矢野に声をかけた。


「そういえば、昼休憩の時ももちゃんと一緒にいたよー?」

「透と?ありがとう助かった!」


 矢野と炎真は走り出した。


「誰だソイツ」

「桃瀬 透って子、可愛い物が大好きで当の本人も可愛い子かな!多分翼、透に捕まったんだと思う……ちょっとやばいかも」

「何がやばいんだ?」

「……実は……」


 言いづらそうに矢野は話し始めた。


 事の発端は昨日、転校生の事が気になっていた桃瀬は矢野にLINEで「写真とか見せてよ!」と送ってきた、朝質問攻めされている二人をこっそり写真に撮り桃瀬に送った。


『赤髪の子かっこいい♡』

『炎真 眞斗って名前だってさ』

『ふぅん……眞斗くんね、色々知りたくなっちゃった♡』


 と、LINEをしていた。桃瀬は炎真に一目惚れしたようだ。惚れやすい桃瀬、イケメンを見つけたらすぐに好きになる桃瀬の体質に矢野は慣れていた。


 いつものが始まったなぁ……なんて思いながらLINEを閉じて後ろの席に座った炎真と蒼井に「よ!」と挨拶をした。


 そして二人を柔道部に誘うことに成功して、部室を綺麗にした。炎真に「掃除が終わったら技を教える」と約束してたが疲れたので逃げるように学寮へ帰ることに成功した。


「あー楽しかった!……ん?」


 スマートフォンを触っていると不意にTwitterが気になり、開くことにした。すると桃瀬の裏垢が久しぶりに動いてるのを見た。


「……げっ」


 アカウントをタップし、ツイート欄を見ると炎真について色んなツイートをしていた。


 “誕生日は一月一日”

 “彼女はいない”

 “部活は柔道部に入ったみたい”

 “かっこいい姿”

 “話しかけたい”


 などなど……分単位でツイートをしている。


 追いかけ回してるんだな。とツイートを見て察したが、まー人の勝手だし好きにしたらいいんじゃないかなーと楽観的にスワイプしていくと、新しいツイートがちょうどされた。


 “あの黒髪、邪魔、話しかけられないじゃない”


 あの黒髪……多分蒼井の事だろうと推測、変なことしないといいけど……とTwitterを閉じた。


 それがまさか……こんな事になるなんて……


「あのツイート的に、多分透がなにかしてるんだと思う」

「テメェ勝手に盗撮してんじゃねぇよ、だからめんどくせぇ事になるんだろ」

「ごめん、悪気はなかったんだけど……まさかこんな事になるなんて……」

「その透っつー奴はどこにいんだ?」

「演劇部に入ってるからとりあえず演劇部に行ってみよう!」


 二人は演劇部に向かって走っていった。


 演劇部として使用している教室に到着、炎真は躊躇なく扉を開けた、すると中は演劇練習真っ最中だった。


「透っつー人間はどいつだ?」

「ちょっとちょっと、困るよー……演劇中は静かに入るようにって扉に書いてたでしょ?」

「すいません先輩、ちょっと透探してて……」


 演劇部の三年生の部長が対応してくれた。矢野は桃瀬の居場所をその先輩に聞く。


「ももちゃん?んー……誰か知ってる人いるー?」


 演劇を中断してくれ、皆に桃瀬の居場所を聞くが首を傾げるものが多かった、そんな中一人の女子生徒が慌てて部室の奥へと隠れたが炎真はそれを見逃さなかった。部室に足を踏み入れその女子生徒の肩を掴む。


「オマエ何か知ってるだろ?」

「あのっ……その……」

「言え、桃瀬 透はどこにいる」

「眞斗ちょっと怖いよー……ごめんね?あんまビビんないであげて?……透に連絡できる?」

「は、はい……連絡してみます……」


 スマートフォンを取り出し桃瀬に連絡する女子生徒、耳にあてしばらくしたら出たようだ。


「あっ、ももちゃん?実は……きゃっ」


 相手が出たのをわかったようで炎真はスマートフォンを奪い取り、スピーカーにした。


「オマエが桃瀬 透だな?」

「……まさか眞斗くん?きゃっ、声もイケメーン♡」

「透、ふざけないで」

「あ!ハルもいるんだね」

「ニンゲンをどこにやった」

「“人間”?あー翼くんのこと?……ふふっ」


 桃瀬は少し笑を零し続けた。


「見つけてみて!貴方達に見つけられるかわからないけど……そしたら翼くんを返してあげる」

「……何が目的だ」

「ふふふ……それはひ・み・つ」


 それを最後に電話は切れた。


「無茶苦茶だなぁ……」


 矢野は頭を抱えた。炎真はスマートフォンをポイッと投げ女子生徒は慌ててキャッチする、演劇部をズカズカと出ていき矢野はその後を追いかけた。


「もし透が帰ってきたら俺に連絡してー!じゃ!お邪魔しましたー!」


 そういい演劇部を後にした。炎真は大股で早々と歩く。


「眞斗!どうする気?」

「オレたちに見つけられるかわからないと言っていた」

「そうだねぇ……一体どこだろ……」

「……あそこだろ」

「お?」


 くるりと方向転換しとある場所へと向かっていった。




 スマートフォンの縁をなぞりニコニコと笑うのは桃瀬。


「ふふ……見つけられるかなぁ、眞斗くん、ハル」

「……もも、ちゃん……」

「翼くん、もう少し大人しくしててね……痛いようにはしないから」


 桃瀬は蒼井ににじみ寄る。


「さて……これで終わらせてあげる!」

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《地獄から人間界へ》堕ちてきたニンゲンと共に人間社会を知り学園生活を送りなさい!! のこ竹。 @nokotake

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