第51話 すべてを切る!

■ボルド視点


はぁ……。とんでも無いことになった。

なんで貴族の娘さんが冒険者なんぞになろうとしているのか。

男なら分かる。たまにあるしな。

その場合は適当に試験受けさせて簡単な任務を任せてやればいい。

だいたいその一回で期待していた冒険が出来ないと分かりやめていくもんだ。

魔物の討伐任務に行かせれば、そもそもモンスターを見つけられないってこともざらだ。

魔物を探して森の中をあくせく歩き回れば、暑苦しいし、虫は出てくるしで貴族のお坊ちゃんはうんざりしてやめていく。


しかし、娘さんは始めてだ。

しかも本人がなりたいわけではなく父親の、リヴィオ様の命令だと言う。

ルアーナ嬢ちゃんはとても顔が整っている。

10歳らしいが女であることに違いはない。

ど変態なロリコン野郎が変な気を起こさないでいられるかわからない。


リヴィオ様は一切の責任をギルドに問わないと書状に書いてあるがいざとなりゃ、こんな紙切れ何の効果も無いだろう。


どうやって追い返そうか……。

一介の冒険者のように扱え?

よ、よし! ここは一つ、荒々しく扱って本人のやる気を削ごう! 

そしてリヴィオ様に泣きついて無かったことにしてもらうしか方法はない。


思いっきり脅すように、声に殺気すら込めたのに何故か喜んでいる。

……リヴィオ様が常識を教わってこいっと言ったのが少し理解できた。


場所を冒険者ギルドに併設されている訓練所へ移した。

普通の冒険者として扱ってよいなら礼服は要らんだろう。

ちょっと時間をもらって着替えさせてもらった。

ふぅ、これで一息付ける。


移動しながら暇そうな連中に声を掛け、訓練場に集まるように言う。

世間知らずなお嬢ちゃんが登録試験を受けるからなるべくやる気を削ぐようにヤジを飛ばしてくれっと。

俺の恫喝に動揺は見せなかったが、集団からヤジを飛ばされれば少しは効果があるだろう。


「えーっと、嬢ちゃん。それじゃ実力を見せてもらおうか!」


言いつけ通り人が集まってきている。

冒険者なんざ、粗野な人間の集まりだ。普段はもうちょっと大人しく出来なねぇのか!っと思うところだが、今日に限ってはありがたい。

このお嬢さんのやる気さえ削いでくれればそれでいい。


「それじゃぁ、摸擬戦……はあれだから、う~ん。そうだ! あの木人形に向かって攻撃してみろ! うん、それにしよう!」


登録試験は本来なら摸擬戦だ。

しかしそれで怪我されたら大変だ。


「あ! 魔法はダメだ! うん。えっと。冒険者なら剣の一つも使えなくちゃならねぇ。小娘! そこにある木剣から選んで打ち込んで見ろ!」


確かリヴィオ様は魔法が得意だと言う話だ。かなりの大魔法使いだと聞く。

そのご息女だ。文句の着けようがない大魔法を使われちゃ失格に出来ない。

はぁ、それにしても何て呼んだらいいんだ?

ルアーナ? お嬢ちゃん? 小娘? もう嬢ちゃんでいいか。


嬢ちゃんは訓練所にあったショートソードほどの木剣を選び、逆手に持った。

そして肩幅の倍ほど足を広げ剣が後ろに回るようにぐるりと腰を捻った。


「なんだ? あの構えは?」

「まるで素人だな。」

「ハハハ、ありゃダメだ。」


確かにずいぶん独特な構えだ。

しかし、適当にやっているとは思えない。

動き自体に何か芯のような物を感じる。


「はぁぁぁ!!」


嬢ちゃんが気合の声を上げる。

それとともに嬢ちゃんの全身を青い光が包み込んだ。

その光は燃え上がるように激しく立ち昇っている。


「え? なにあれ?」

「まさか闘気?」

「闘気って目に見えたっけ?」


闘気は普通では目に見えない。

肉眼で見えるほどの闘気?

実力者が闘気を練りこめば、薄く全身に纏うように見ることが出来ると聞いたことがある。

間違っても嬢ちゃんのようにボウボウと燃え上がるように見えるものではない。

魔力? いや、嬢ちゃんは黒目黒髪だ。

魔力にしても闇属性だろう。そうなれば黒のはずだ。


(ほ、本当に闘気なのか!?)


この歳で闘気を扱う? 魔法より遥かに珍しい。

珍しいがいないわけではない。

それにしてもこの量を練り上げる奴は大人でも聞いたことがない。

すでにこの時点で失格を言い渡すことが不可能なことがわかった。


混沌の魔女とリヴィオ様の子供じゃないのか?

どっちも魔法使いだよな?

なんで闘気習得しているんだ!? 大人しく魔法やっとけよ!


(闘気を習得しているんだったら魔法の試験にすれば良かったか?)


闘気を習得しているなら魔法は使えないはずだ。


(くっ! 選択を誤ったか!?)


そんな後悔を感じていると嬢ちゃんに動きがあった。

全身に纏っていた闘気がゆっくりと木剣に移動している。


「見ろ! 木剣が光っていく!」

「剣に細工が?」

「いや、訓練所にあったやつだぞ!」


すべての闘気が木剣に移り、バチバチとまるで雷のように光っている。

な、何をやろうとしているんだ?

嬢ちゃんは一気に踏み込むと剣を逆手のまま振りぬいた!


「ア〇ンストラッシュ!!!」


スバッ!!


鋭い音とともに周囲が光で満たされる。

そして光が収まると木人形は綺麗に切断されていた。


あまりの光景に訓練所はシーンと静まり変える。


「じょ、嬢ちゃん、今のは?」


「大地を切り、海を切り、空を切る。そして全てを切るのがあの技です。」


嬢ちゃんは胸を逸らしながら自慢げに語った。


「い、いや、あれだけ闘気練り込んだらそりゃ何でも切れるだろうよ。」


むしろ切れない物があったら教えてほしいくらいだ。

凄い力技があったものだ。


メキメキメキ、バキン!


嬢ちゃんが持っていた木剣が音を立てて砕け散った。


「ふっ。私の力に木剣が耐えられなかったようですね。」


「いや、そりゃあれだけ闘気込めたら耐えられないだろう。むしろよく一撃持った方だ。」


「……そういう風に調整をしましたので。」


うん? つまりワザと一撃で壊れるようにしたってことか?

……何がしたいんだろうな、この嬢ちゃんは。


「それで合格ですか?」


嬢ちゃんはコテンっと小首を傾げながら聞いてきた。

これで不合格にしたらこの後一切合格者が出なくなってしまう。

認めるしか無いのか?


「ご、合格だ……。」


合格を認めてしまった……。

今日のこの光景を見て嬢ちゃんにちょっかいを掛けるアホが出ないことを祈るばかりだ。


―――――――――――――――――――――

※あとがき

 ストックが切れました。

 すいませんがしばらく書き溜めをします。

 ひょっとしたら半年ほどかかるかも・・・ 最近仕事が忙しくて・・・

 

 ちょっとネタバレですがルアーナは普通に冒険者をやります。

 ギルド長から冒険者は師弟制度だといわれ、師匠を探します。

 師匠を見つけて普通に冒険します。

 悪目立ちもしません。普通です。

 ただ師匠と他の登場人物がちょっと特殊です。


 11歳編は兄貴たちが冒険者になろうとコルンブロ領にやってきます。

 そこへルアーナが男装して紛れ込む話。

 兄貴たちの世話をギルド長に押し付けられる展開です。

 そこでひと夏の冒険の予定・・・ ここまで書いたら再開します。


 役に立つかわかりませんが、作者が面白いと思ったweb小説作品紹介


 掲載:小説家になろう

 タイトル:狂乱令嬢ニア・リストン

 説明:主人公最強物。

    この幼女強いっす。


 掲載:小説家になろう

 タイトル: オットー・フォン・ハイデッカーはゲーム脳。

 説明:主人公最強物。

    ハーレムもの、かなりエロい。そして暴力的です。

    主人公は笑いながら敵の腕を折ります。

    普通の転生物とやや違いますがそこが面白い!

    続編が小説家になろうのXにあります。

    「オットー・フォン・ハイデッガーはゲーム脳◇」

    その次の続編がカクヨムにあります。

    「オットー・フォン・ハイデッカーはゲーム脳∵悪魔の軍団」

    作者名が全部違うので探しにくい・・・    


 掲載:小説家になろう

 タイトル: 夜伽の国の月光姫

 説明:勘違い物。TS主人公。

    主人公は弱いし性格悪いのですが周囲が勘違いしてあれこれ問題を解決します。


 掲載:小説家になろう

 タイトル: デスゲーム漫画の黒幕殺人鬼の妹に転生して失敗した

 説明:タイトルの通り。主人公は兄貴を殺人鬼にしないために頑張る話。

    読んでてハラハラドキドキしますw


 掲載:小説家になろう

 七沢またり先生の作品 どれも面白いです。

 「死神を食べた少女」

 「火輪を抱いた少女」

 「勇者、或いは化物と呼ばれた少女」

 上記3作品は特にお勧め。

 主人公は最強ですが常識的な最強です。個では強いけど軍隊には勝てません。

 戦記物かな?


 掲載:小説家になろう

 ジュピタースタジオ先生の作品 どれも面白いです。

 「北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた」

 「エロゲの魔王様」

 「僕は婚約破棄なんてしませんからね」

 上記3作品は特にお勧め。

 北海道の現役ハンター~ は害獣被害ってすごく大変なんだなってのを学べます。

 鳩に餌をやってはいけません。


皆さんもお勧めがあったら教えてください!

教えてもらったら読み始めちゃうので筆が止まるんですけどね!

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TS転生! ロリコンから逃げるため最強を目指す! さっちゃー @sattya

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