第5話 おやすみなさい、弟くん。

「弟くん、一緒におやすみ、しよっか」


「……どうしていきなりかって?」


「それはね、お姉ちゃんが弟くんと一緒に寝たいから」


「っていうのもあるんだけど、弟くんは疲れもたまってるでしょ?」


「疲れてるときって、疲れてるはずなのに眠れないって時あるよね」


「だからね、弟くんもそうじゃないかなーって思ったの」


「……うん、やっぱり眠れない時もあるんだね」


「それなら、やっぱり一緒に寝よっか」


「……どうして一緒なのかって?」


「それはね、お姉ちゃんが、弟くんを寝かせるためだよ」


「ん? 一緒に寝るの恥ずかしいの?」


「もう、お姉ちゃんと弟くんの仲なんだから気にしなくてもいいんだよ」


「ほーら、おいでおいで、一緒にお休みしよっ」


//SE:足音

//SE:布団に入る音


(左、近)ここから、最後まで。耳近くで囁く感じで。有声音、無声音どちらも可。話しやすい方でお願いします。

「うふふ、こうして弟くんと同じ布団に入るのはいつ以来だろうね」


「小さい頃は、弟くんのお家にお泊りにいったりして」


「こうして一緒に寝ていたよね」


「でも、大きくなってくるとお互いの両親に止められて」


「一緒の布団で寝る事もなくなったね」


「あの時は、なんでーって思ったけど」


「弟くんも男の子だもんね。いろいろ……あるよね」


「うふふ、あの時は、そこまで考えられなかったんだ」


「ただただ、弟くんと一緒に居たいだけだったからね」


「だからね、こうして一緒のお布団で寝られることがとっても嬉しいんだ」


「ふふ、嬉しすぎて忘れちゃうところだったけど」


「今日は弟くんを寝かしつけるんだったね」


「どうやったら弟くんが寝られるのか考えたんだけど」


「退屈な時や単純な事とかって眠たくなるよね」


「車にゆったりと揺られているときや」


「勉強しているときなんかも、ついつい眠たくなる事もあるよね」


「だから、同じように退屈に感じる事を考えてみたの」


「それはね、数を数える事。羊を数えると眠れるって言うじゃない?」


「羊を数えるんじゃなく、ただただ、数字を数えるの」


「すごく退屈そうでしょ? だから、きっと眠れるはずよ」


「数字を数える以外にも、お姉ちゃんが側に居る事で」


「安心して眠ってくれると嬉しいかな」


「目をつむって、お姉ちゃんが言う事に耳を傾けていてね」


「それじゃ、数字を数えていくよ。100から0まで言ってみるね」


「いーい? 始めるよー。100,99,98,97,96,95,94,93,92,91,90」


「89,88,87,86,85,84,83,82,81,80,79,78,77,76,75,74,73,72,71,70」


「ふー」一息つく感じで。


「69,68,67,66,65,64,63,62,61,60,59,58,57,56,55,54,53,52,51,50」


「ふぁ~」大きなあくびをする感じで。


「49,48,47,46,45,44,43,42,41,40,39,38,37,36,35,34,33,32,31,30」


「29,28,27,26,25,24,23,22,21,20,19,18,17,16,15,14,13,12,11,10」


「9,8,7,6,5,4,3,2,1,0」


「んー? 寝ちゃったかなー? うふふ、寝てるみたいだね」


「よかったよかった。弟くん、かわいい寝顔してるなー」


「ぐっすりと眠った、そんな弟くんにちょっとお話しようかな」


「起きてる時に言える勇気がないお姉ちゃんなんだけど」


「弟くんの事は、ずっと本当の弟のように思って、好きなんだけど」


「最近、自分の気持ちに気が付いたことがあるの」


「この先も、私の弟としてずっと一緒に居たいって気持ちもあったのだけど」


「もし、弟くんに好きな人が出来て、その人と一緒になるってことを考えると」


「それは嫌だなって、弟くんの側に私以外の人がいるのは嫌って思ったんだ」


「本当のお姉ちゃんだったら、弟くんに好きな人が出来て一緒になるなら」


「応援してあげるべきなんだけど、私にはそう思えなかった」


「弟くんは覚えているかな? 私達が初めて会った時の事を」


「弟くんが引っ越してくる前にね、私は、弟か妹が欲しいと思ってたの」


「テレビの影響だったかな、お姉ちゃんっていいなーって思ってね」


「そんな時に、弟くんが隣の家に引っ越してきてくれたんだ」


「最初の挨拶の時、私は人見知りしちゃってて」


「親の後ろに隠れて挨拶できなかったんだけど」


「弟くんが笑顔で挨拶してくれたおかげでね、私も挨拶できたんだ」


「それから、毎日のように遊びに来てくれたよね」


「積極的に来てくれて、とっても嬉しかったんだけど」


「お姉ちゃんになりたいって思ってた私は、自分の事を情けなく思ったの」


「私の方が年上なのに、年下の弟くんに何もできてないなって……」


「こんな私じゃ、憧れていたお姉ちゃんになんてなれないと思って」


「色々がんばり始めたんだよ。お片付けや苦手な物も食べるようにして」


「弟くんの見本になれるようにって思って頑張ってみたんだ」


「頑張っているとね、とっても楽しんでる私に気が付いたんだ」


「嫌だって思ってたことが、弟くんのためだと思うと」


「全然いやじゃないって思えるようになってね」


「毎日が楽しくて、弟くんと一緒にいると、幸せで」


「ずっと弟くんと一緒に居たいって思うようになったんだ」


「でもその気持ちは、あくまでも姉と弟としての気持ちだと思ってたの」


「でもね、久しぶりに会って、弟くんの事を弟としてじゃなく」


「男性としても見るようになった私に気が付いたんだ」


「さっきも言ったけど、弟くんに好きな人が出来たらって思うと」


「それを認めたくないて思う私がいたのね」


「ずっと弟として見ていたはずなのに、男性として見るのは」


「不思議な気分だけど、すっきりした自分がいるのにも気が付いたんだ」


「起きていたらこんな事言えないし」


「もし弟くんが、私の事を女性として見られないって言われたら」


「ショックでどうにかなっちゃいそうだから言えないんだ」


「でも、この気持ちを止められないから」


「こうして弟くんが寝てる間に言うのでした……」


「弟くん、弟としても男性としても、好きだよ」


「チュ」リップ音、ほっぺにキスするイメージ。


「言いたい事言ったら、ほっとしちゃった」


「私も寝ようかな、おやすみなさい、弟くん。大好きだよ」


「……」寝息、30秒ほど。

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【ASMR部門】弟くん! お姉ちゃんがいっぱい癒してあげるね! 花屑ひなた @hanakuzu

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