シークレットエリア 無力の剣王

一瞬で景色がかわる

見慣れたといえば見慣れた風景、道場だ

その奥には顔が黒い和装の男、その前には立派な刀


「シークレットエリア到着を確認 クリア条件 無力の剣王の討伐」

頭にまた声が響く


「無力の剣王か」

剣王がゆっくり立ち上がり刀を構える、その所作で、かなりの強者だとわかる

俺も刀を構える


にじり寄る両者、そして何の合図もなく両者は弾ける様に距離を詰める

「ぐっ」

鍔迫り合いになる、剣王の力はすさまじくうけるので精一杯だ


しかし力だけが全てではない

俺は刀身を滑らせる様に逸らして、いなそうとした

いなして一度距離をとって、作戦を練ろうと思った


しかしそれが剣王を前にどれだけの無策かもしらずに

剣信の刀身を滑る剣王の刀、そのまま地面に叩きつけられるとおもいきや

途中で止まり半円を描き回転、剣信の胴体を狙ってきた

その動き単純ながら人間業ではない、剣信は虚を突かれた

普通の動きでは防げない、剣信は刀の持ち手の尻、鵐目で何とか刃を止める


しかし、それは切り裂かれることを避けるだけである、衝撃はもろにうけ剣信は吹き飛ばされる

地面に体を打ち付けられたが、すぐさま態勢をなおす


追撃がくるかと思ったが、それはなく剣王は静かに構えなおしていた

それは挑戦者をまつ王の姿

「このくそ野郎」

俺は刀を握りなおして、剣王に斬りかかる

剣王は受けるまでもないと言わんばかりに紙一重で全てよける


正直言って剣信は強い、適合者になってその力は更に上がった

その剣速は紙一重でよけるなんてなめた真似できるレベルではない

むきになって繰り出す剣は掠りもせず空を斬る

合間に足技もフェイントも挟むがすべて無に帰す


すべてが読まれている


「ならこれしかないわな」

剣信は型を捨てる、しかし、それは風斬流の技の一つ

風斬流 暴の剣 嵐

自分の力を制御無しに叩き込む、自分も剣筋などわからないが相手も同じく読めない


強制的に泥試合に持ち込む技


だった


「は?」

暴れ舞わす剣を数度避けた剣王はあきれた様子で肩を落とし、剣信の刀を刀でおさえつけた


それは剣王との差の証明、完全に力を受け切られた上に押さえつけられる

強い事は分かっていた、自分が今まで戦ってきた相手よりも強い事も


しかし、これほどの差とは思っていなかった


絶望に浸る時間もなく、剣王の前蹴りが腹部に直撃する

「ぐっ」

歯を食いしばって何とか耐えるが、剣王の刀が襲ってくる

剣筋は速く重い、ギリギリのところで耐えてはいるが、完全に受け切れてはいない、剣信の体は少しずつ、切り刻まれていく


そんなギリギリの状態も長くは続かない


剣王はまたがっかりしたような顔をして剣信から距離を少し取る

それは剣信にとって幸いにみえるかもしれない

しかし剣王が取る構えは居合、もう終わらせるつもりなのだろう


剣信が生き残るにはこの化け物に居合で勝つしかない、より早く、より強く


しかし、それは不可能だ、普通の攻撃すら剣信の居合より速いかもしれない

そんな奴の居合を超える等不可能だ


剣信の中で、死を覚悟させるには十分な条件


「ふざけんじゃねぇ」

剣信は自分を振るい立たせる、頬を叩くなんて無駄な真似はしない

静かに自らを律する


ゆっくりと確実に剣信も居合の構えを取る

これから放つは、風斬流居合の奥義「風斬」流派の名を持つその一刀は最速の居合

風斬流の誇りだ

これを出すからには負けられない


剣信と剣王の間に静かな一時が流れ、合図もなく、両者同時に刀を抜いた


(死んだ)

剣信の視界は極限の集中により、スローモーションになっている

格段に剣王の居合の方が速い斬られる前にわかってしまった


走馬灯が駆け巡る、今までも人生が一瞬で

じいさん、ばあさん、拳、そして両親

楽しかった事、苦しかった事、そのすべてが駆け巡る


死んでたまるか


まだやり残したことしかない、なにもやり遂げれていない


刀を握りる手に熱が籠る、そんな事で剣速は上がらない

しかし手に籠った熱が全身に巡る、それが全身に満ちたその時

全身に風が纏い、俺の剣速を加速させた


実際の時間は一秒にも満たない時間

居合勝負は

「ぐふっ」

剣信の負けである


胸を大きく切り裂かれた

誰がどう見ても重症である


しかし、剣王に剣信の技が届いていないわけではなかった

服が切り裂かれ、黒い体見えているが傷はない


剣王は切れた服をみてニヤリとわらう

「今殺すにはおしい男であるな」

剣王は俺に背を向けて道場の奥に消える

「そのスキル、誇りにするといい」


こいつ喋れたのかという驚きと共に俺の意識は闇に消える


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道場復興の為のダンジョン攻略 @zyazigai

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