第2話 まどの外に少女がいた
翌日。
自分は久しぶりに外に出て、姉と大きなたてものに来ていた。
「ご協力ありがとうございます」
「いえ……この子の友達だったみたいなので、せめて供養だけでもと」
「そういうことでしたか……後ほど、ここを出てすぐ右手の建物にあります慰霊碑に納骨致しますので、良ければそちらにお越しください」
「ありがとうございます」
自分を抱えている姉は、話が終わるといすに座り、自分の頭をゆっくりと撫でてきた。
「ソラ。あの子はね、これから凄く遠い場所に行っちゃうの。でも誰もあの子が遠くに行っちゃう事を知らないから、私たちだけでもあの子を見送らなきゃ」
……姉が何を言っているかはよく分からなかった。
でも、昨日もくるまがどうとか言いながらずっと泣いていたから、大事なことを言っているということは理解できた。
その時も何を言っているのかよく分からなかったし。
ただ、昨日の夜にだんぼーるから彼女の匂いと、変な匂いがしたから、なんとなく何が起きたのかは分かっていた。
彼女は死んだのだろう。
悲しくはない。姉のように涙が出ないのだから、悲しくなんてないはずだ。
ただ、後で行った少し小さな部屋で揺らめいていた謎のけむりの匂いを嗅いだとき、妙なほどに目の奥がくすぐったくなった。
それからしばらく、朝は毎日まどべで過ごした。
理由はない。彼女ももう来ることは無かった。
だから、今日でこの日課もやめよう。
自分がここに立っていると、姉が少し悲しそうな顔になるから。
初めての友達へ。いつも明るかったあなたは、今どこにいますか?
名前も知らない貴女へ。短い付き合いだったけど、悪くない毎日でした。
大切だった貴女へ。自分は元気です。だからどうか、自分ではなく、あなたの大切な人を見守ってあげていてください。
まどべの猫 ソラ
まどの外に少女がいた @kitamu_2510
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます